第4話 丑の刻参り
「へへっ!
俺も一発目から自信作だ!」
彼はすーっと息を吸うと
真顔ではーっと吐き出した。
『丑の刻参り』
サークルの飲みメンバー…ま、いわゆる飲みサーのゲームに負けた僕は今
とある神社の前にいる
昼はなんともない、どこにでもある普通の神社
でも、夜中になると
うめき声が聞こえたり
叩くような鈍い音が聞こえたりするらしい
そんなウワサがあるここに
昼中に僕のペンケースを置き去りにした飲みサーのメンバー
夜中……“丑の刻”になったら取りに行け
それが罰ゲームだった。
「さて…丑の刻だな」
「うん…行ってくる」
ちゃんと丑の刻で行ったかアリバイを作るためにこの辺に住む友人にも証拠を撮ってもらった
さて、ペンケースの位置は神社の真裏。
そこへ行くには音が鳴るとウワサの木
それを避けれるルートもある。が、
でもどうしても視界に映ってしまう。
仕方がない…そこは妥協しよう
「しかし……
夜になるとやっぱり雰囲気あるなー」
てか、丑の刻参りってなんか意味あるんだっけ
よく知らないで来たな
よく分からないけど余計な物は見ない方がいいのは事実。
先を急ごう。すぐにペンケースを持って帰れば問題ないんだから。
ウワサの木の近くだ…
でも音しないし楽勝じゃ………
かん…かん…かん…かん……
…!
音…これは何かを叩く音じゃないか?
となるとやっぱりウワサは本当で……
かん…かん…かんっ!…かんっ!
叩く音が…どんどん強く……!
まるで怨念でもあるかのように…
あ、そういえば
「女の人に気をつけてね?」
そう言われたな。あいつなんか知ってんだろ…
かんっ…かんっ…カンッ!…ガンッ…!
叩くというより何かを打ちつけているように聞こえるなこの音
だんだん強くなっているし案外間違いじゃないのかも知れないなあ
ま、僕に関係ないし…先に進もうかな
音は気になるものの、先を急いだ。
なるべく木の方は見ないようにして
本能的に見ちゃいけないものだと感じた
神社の真裏に来た。
ペンケースは……あった。
しかし大事なキーホルダーは外れている
鈴付きのお気に入りのやつだったのに…
と思う半分
今だけはそれがありがたい
と思う半分。
「さて。戻るのか…」
ここから柵を越えて森を歩いて一般道に出るのもアリ。
…この境内の高い柵を越えられる身体能力を持っていたなら。
気づかれないよう来た道を戻ろう。
とはいえもう音はしなくなった。
始めから人の気配はない
警戒する必要もないな。
「ただいまー」
気がつけば深夜4時。
友人のアパートへ帰って来た。
先に帰ってるとメッセージが来ていて
忍び込むように一緒の布団に雑魚寝した。
「おい……お前、神社で何して来たんだよ」
「もう朝……?」
「ああ、朝だよ。メシ買いに行くぞ?」
それから腕を引っ張られてまだ日の登りきっていない道を歩いてコンビニに入った。
歩いている感覚は無かった
「おい、お前!神社で何してきたんだよ…」
「え?なに?いきなり…」
「なんでお前の背後にずっと“女の人”がいるんだよ」
「…はい!おしまいー!」
ついつい聞き入ってしまった。こいつ、中々上手いな。
「え、すごーい!めっちゃこわくなった…」
「ほお…中々やりますね。これは私も自信作を出すしかないようですね……!」
あ、次は寺の坊主か。
…正直楽しくなってきたな、これ
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