第31話 帝国に巣食う影
「ゼノ、クロウは剥がれた。もうダメだ」セツがゼノに呼びかける。
「引く…か。コイツ…抵抗しやがって。セツ!影気をよこせ」ゼノが叫ぶ。
ゼノの声にセツが頷き、セツの手からゼノの体に黒い霧が移動する。
「なっ!させるか」マユキは、慌ててゼノを攻撃する。が、一歩間に合わず。
ゼノは、マユキの攻撃をかわしセツのもとへ。
「まさかこんな事になるとは…マユキ…貴様さえいなければ」ゼノがマユキを睨む。
マユキが薙刀を突き出して叫ぶ。
「おいお前ら!何百年帝国に潜り込んでいるのか知らないが、もう好き勝手させないからな!この国の新たな光と共に私達が影を払ってやる!」
今まで黙っていたライルが口をひらく。
「先程のクロウ君を見て、あなた達の能力が少しわかりました。そのお二人に憑いていても、もうこの国に影響を与える事は出来ませんよ?」
ソータが「えっ?」と驚いた顔をしている。
「俺達の能力の、一端を見ただけでわかった気になるなよ。見てろ…国ごと滅ぼしてやる」そう言うと、ゼノとセツは去って行った。
「逃したか。この事は、現蒼将に伝えるべきだな」マユキは、ペン汰を担ぎ上げる。
「何してるんだい、いくよ!レイン」マユキがレインを見る。
「は、はい」レインは混乱した様子だがマユキに言われるがままについていく。
「ソータ君至急、救護班と荷車の手配をお願いします。私はここで待ちます」とライル。
「わかりました!」慌ててソータは首都アズリスへ戻る。
「良かった、ペン汰君が無事で。ほんとに良かった」
ライルは、疲労した様子で座り込む。
――翌朝。
蒼将の間に上層部全員が集められた。
そこには、マユキやペン汰、レイン、ソータの顔ぶれもあった。
帝国蒼将が将席へ座り。一同が片膝をつく。
「皆、至急の召集ですまないが。昨夜…ある事件が起こった。国を揺るがすほどの…だ。
噂に聞いては、いるだろうが…事の顛末を話してもらう」と言うと蒼将は、立ち上がりマユキの方を見て頭を下げる。
「マユキ様、お願いします」一同は、マユキに注目し、緊張が漂う。
「蒼将が頭を下げるな!様もいらない。命令しろ」
マユキが一喝する。
「はっ。」蒼将は、頭を上げる。
「マユキ殿、説明してくれ」そう言うと将席に座る。
「うん、それでいい。皆も楽にしてくれ」マユキが笑みを浮かべる。
場の雰囲気が和らぐ。
「それでだ……」マユキが、この国に昔から伝わる蒼玉に関する間違った情報や血筋の話をするとともに、蒼玉や蒼気に関する真実を話す。
「これらの間違った認識は、影の奴らが意図的に情報操作していたのでは無いかと私は考えていた…が。確証がなかった。黒幕が誰かさえもわからなかった」
マユキが拳を握る。
「蒼将の立場では、公に調べることもできん。だから私は立場を降りて中枢から離れた所から、ずっと探っていたんだ…」マユキが言葉に詰まる。
「ここからは私が」とライルが前に出る。
何百年も前から影が中枢の中心人物の意識を奪い、国を操っていた事を話す。
「これらの事は、昨夜の事件で確証に変わりました。ここにいるペン汰中隊長の隊が襲われました。
襲った者は…ゼノ特戦隊長とセツ文官統括です」
とライルが話すと場内がざわめきだす。
「確かに見当たらないぞ」「しかしそのお二人は…」
「俺は前から嫌いだったぜ。なぁゼン!」「しらん」
場のざわめきが収まらない。
「静まれ!」マユキが一喝。
場内は、静まり返る。
(こ、こわっ)ペン汰とソータは心の中で震える。
「皆、勘違いして欲しくない。ゼノとセツが悪ではない。彼らは操られている。私もこの目で確認した」マユキが拳を握る。
「そうです。彼らの意識は封じ込められている状態なのです。それを前提に今からの話を聞いてください」ライルが話しだす。
「昨夜の戦闘で、彼らは追い詰められました。取り逃がしたのは痛手ですが。彼らの能力の一端は掴めました。これは、大きな1歩です。おそらく、彼らは他国の中枢にも入り込んでいるでしょう」ライルの言葉に場内が少しざわめく。
「ですが…まず!私たちの国から影を排除しましょう。彼らは去り際に、この国ごと潰すと言っていました。近いうちに何かしら大きな動きがあると考えます。その対策をしなければなりません」ライルは、蒼将の方を向き片膝をつく。
「蒼将。よろしくお願いします」ライルは、頭を下げる。
「うむ。では、指令をだす。各部隊長は、至急戦力の確保と部隊編成を急げ!ゼノの隊は、ライルの指揮下に入れ。文官は、私の指示を待て」蒼将からの指令が言い渡された。
一同片膝をつき返答する。
「それから、ペン汰。無理をさせてしまうが、セツとゼノの部下は影の侵食を受けている可能性がある。君の力で内部の影を洗い出し排除してくれ」蒼将がペン汰を見る。
「承りました」ペン汰は、頭を下げる。
「よし!では、ペン汰に一時的に将軍階級の特権を与える。ペン汰の言葉は将軍の言葉だ。ペン汰に従い身の潔白を示せ!それでは、各々任務を全うしてくれ」
蒼将の声で一同任務に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます