第29話 動き出した影
29話〜動き出した影
「大きな声じゃ話せないんだけどさ」と3人が近くによりコソコソとソータが話す。
「ペン汰。お前命狙われてるぞ。しかも、この国の重役に」とソータ。
「え?僕が?」ペン汰の声が大きくなる。
「こら!誰が聞いてるかわかんないんだから、大きな声だすな!」ソータがペン汰の頭を軽く小突く。
「この前の戦で、弓の毒で死にかけただろ?あれは、敵の弓じゃない。そもそも、ワン牙は毒なんて使わないからな」とソータ。
「確かに…弓を使う事自体が珍しいって隊長も言ってた」とレインがペン汰を見る。
「それって…」ペン汰が考える。
「うん、第3の勢力が絡んでいた可能性があるって事だ…とライルさんが言ってた」ソータが深刻な顔で話す。
「ソータの話だと、その勢力がうちの重役の中の誰かって事?」レインがソータに尋ねる。
「…まだ確定はしていないけど…ライルさんは、ある程度目星はつけているらしい。俺にも教えてくれないけど…」ソータが腕を組んで考える。
「まぁ、今回ペン汰が昇進して良かったよ。ある程度の階級になれば部下を連れて歩けるから。表立って狙うのは難しいはず」ソータがペン汰の肩を叩く。
「そうね。今回本当に大変だったけど…中隊長まで上がったから、護衛という形で守れる…」レインがペン汰を見る。
「私がペン汰の護衛につく!隊長に相談してくる。ソータ教えてくれてありがとね」とレインは隊長のもとへ走る。
「モテモテだな、ペン汰」ソータはニヤニヤしている。
「何言ってるんだよ。ライバルを失いたくないって最初に言ってたじゃん」ペン汰がソータを睨む。
「ははは、そうだったな」ソータが笑う。
「とにかく!気をつけてくれよ。俺だって大事な弟を失いたくないんだからな!」ソータは、拳を突き出す。
「ありがとう!気をつけるよ」ペン汰も拳を合わせる。
「よし!俺も仕事があるから、行くぞ」ソータは、部屋を出る。
「なんで僕が狙われているのかわからないけど…気をつけなきゃ」ペン汰は拳を握る。
次の日、ペン汰はリュウに呼ばれる。
「おぅペン汰!昨日はお疲れ様だったな。とりあえず、中隊長のバッジ渡しとく」リュウはペン汰に章を渡す。
「ありがとうございます」とペン汰は頭を下げる。
「昨日レインから聞いた。俺も、あの毒に関しては、思うところがある…お前の力の事もあるしな。そこでだ!レインの申し出の通り、お前に数人の護衛をつける。そこにレインも加わってもらおうと思う」リュウは腕を組んで話す。
「ありがとうございます」ペン汰は頭を下げる。
「しばらくは、戦もないと思うが、国境の見回りや魔獣討伐など、任務は通常通りこなしてもらわないといけない。頼んだぞ!ペン汰中隊長!」リュウは、ペン汰の肩をポンポンと叩く。
「はい!了解致しました」ペン汰は敬礼する。
「よし、じゃあ頑張ってくれ!」とニコニコしながらリュウは屯所に向かう。
――その頃、ある場所では。
「まさか、あのタイミングで森羅から使者がくるとはな」
「あれがなければ、あの小僧を消せたものを…」
「しかし、本当にあいつが白の使い手なのか?」
「あの白い戦気見ただろう…間違いない」
「だが、白親玉はどこにある?あれが無いと力は発動しないはずだ……」
「白カラスは、持っていなかった…どこかに隠しているのか?」
「わからん、だが…白カラスもあの状態では、生きていまい。裏切り者の生き残りはいないはず。あの小僧さえ消せば…白は、完全に滅びる」
「どうにか、消す手立てを考えなければ…」
「最悪の場合は、私が直接行く。直接終わらせてやろう。お前も備えておけ」
「わかった」
影で、密談が交わされていた。
――屯所では。
「ペン汰、見回りの部隊編成しなきゃ!」レイン。
「そうだね」ペン汰。
「私は、護衛だから貴方の隊だからね」レインは、ペン汰に念を押す。
「わかってるよぉ、レインは心配性だな」ペン汰が笑う。
「本当に、危機感無いんだから…」レインが心配そうにしている。
ペン汰が隊の振り分けをしている。
「よし!できた、皆んなに配ってくる!」ペン汰は掲示板に張り出しに行った。
「なんだかんだ、中隊長やってるね」とレインは笑う。
数日後、ペン汰はレインの部屋へ。
「レイン、僕たちの見回りの時間だよ!行くよ」ペン汰はレインを迎えに来た。
「わかった、屯所の前で待ってて。みんなも居るはずだから」レインは準備をしている。
「わかった!行っとくね」ペン汰は屯所前に向かう。
「来たな、今日はよろしくな!中隊長」隊員はニヤニヤしている。
「はい!よろしくお願いします。そんなからかわないでくださいよ」とペン汰が、はにかむ。
「お前は、入隊当初から真面目だし、いっぱい努力してたもんな。みんな見てたからペン汰の昇進喜んでるんだぜ」と隊員。
「皆さんのお陰です」とペン汰は頭を下げる。
「お待たせ」レインが降りてきた。
「揃いましたね。じゃあ向かいましょう」
ペン汰達は、国境線の見回り兼魔獣討伐に向かった。
物陰から、数人その様子を見ていた事には気付いていなかった…
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