第28話 論功行賞


ルイの治療の翌朝。

ペン汰は、ゆっくり目を覚ました。

「ペン汰!起きたの!」レインがペン汰に話しかける。

「う、うん…レイン?」と、ペン汰は寝ぼけている。

「体は?どうもない?」レインが心配そうにきく。

「体は…大丈夫。僕…どうなったの?」ペン汰がレインに尋ねる。

「あのね…」ペン汰が倒れてから、目覚めるまでの経緯を話すレイン。


「そうか、ルイさんって人が…」ペン汰がお腹を確認しながら頭を整理する。

「あ、あれ?ルイさん?おじいちゃんが夢で言ってた人もルイさんだった気がする」ペン汰は、ハッとした顔になる。


「ねえ!ルイさんは、どこにいるの?」レインに尋ねる。

「昨日は、ここにいたけど、今日森羅に帰るって言ってたよ」とレイン。

「どこに泊まっていたの?」ペン汰は、慌てている様子。

「森羅の使者として来てたから、貴賓館じゃないの?」とレイン。

「行かなきゃ!」ペン汰は急いで貴賓館に向かって走り出す。

「ちょ…ちょっと!ペン汰!体は大丈夫なの?」レインはペン汰を追いかけて、走り出す。


 (急がなきゃ!ルイさんが帰る前に聞かなきゃ!おじいちゃんの事知ってるかも)

ペン汰は、全力で走る。


病み上がりで体力のないペン汰は、どうにか貴賓館まで走ってきたが、息も絶え絶えである。


「すいません!ルイさんはいますか?」貴賓館の入り口で警備員にきく。

「はぁ?誰だ?」貴賓館の警備員が止める。

「すいません!第一隊のペン汰です!ルイさんに治療して頂いたのです!お礼が言いたくて」と事情を話す。


「あぁ、昨日の騒ぎのやつか。なんだ、もう具合はいいのか?」と警備員。

「はい、もうすっかり」とペン汰。

「やっぱり賢者の弟子ってのは、本当だったんだな」警備員が関心している。

「賢者の弟子?すごい人なんだな。それで、ルイさんは?」ペン汰は、警備員に尋ねる。


「朝早くに、戻られたよ。もう国を出ている頃だろう」と警備員。


「そう…ですか。残念ですが、わかりました」屯所へ戻るペン汰。

途中で追いかけてきていたレインに会う。

「もう!あんたバカなの?」レインは呆れ顔。

「ごめんね」ペン汰は謝る。

「まぁ、いいわ、体は大丈夫?ルイさんには会えたの?」とレイン。

「体は大丈夫…だけどルイさんには会えなかった」ションボリしているペン汰。


「まぁ、それは仕方ない。それより明日、今回の戦の論功行賞があるって!あのあと戦はすぐに終わったみたい」レインが笑顔で話す。


「なんでそんなに嬉しそうなの?レイン」ペン汰は不思議そうにきく。


「いや、ほんとにアンタって…バカって言うのも疲れる」レインは呆れている。

「敵の司令官を倒したの誰よ?しかも、結構上の階級の人だったみたいよ」とレイン。


「でも、あれってみんなで…」とペン汰

「そうだけど!倒したのはアンタでしょうが!」

「ほんと疲れる…帰ろ」レインは、プリプリしながら帰る。


 次の日。

 第一隊の論功行賞が行われた。第一隊総勢5000名が集まった。

 帝国蒼将は、軍服の上から豪華な羽織を身に纏っている。

「今回のワン牙との戦、ご苦労だった。諸君らの活躍で国境線が守られた!良い働きであった」と蒼将


「では、今回の功労者を発表する。名前を呼ばれたものは前へ」リュウが進行をする。

 リュウが数名の名前を呼び前に出る。そこにはレインの名前もあった。


「最後に、今回の最大功労者だ。牙将、すなわち部族長クラスを討ち取ったペン汰!前にでろ」とリュウの声が大きくなる。


「は…はいっ」ペン汰は前に出る。


「新人ではあるが、リュウ隊長や君たち隊員から、活躍は聞いている。異例だが、中隊長への昇進とする」

 蒼将が恩賞を言い渡す。

「はっ!謹んでお受け致します」とペン汰は片膝をつく。

場内がざわつく。

 

「3階級の昇進なのだ、皆の反応はもっともだと思う。だが、この中に牙将を打ち取れるものがおるか?」蒼将が隊員達の顔を見渡す。


 場内は、静かになる。

「そうだろう、それほどのことをやってのけたのだ。祝ってやってほしい」と蒼将。


 会場から賛美が聞こえ始めた。


「では、今回の論功行賞を終わる」とリュウが宣言。

隊員達は、順に会場を後にする。


 ペン汰達は、屯所に戻る。

 ペン汰の部屋でレインと話す。

「ペン汰おめでとう!」レインがペン汰の手を取る!

「うん!ありがとう。あんまり実感ないんだけどね」とペン汰。

「あんたは、もう…でも、そうだよね。一年経たずに中隊長だもんね」レインは興奮気味。


「でもさ!レインだって班長に昇進してるよね!おめでとう」ペン汰もレインをお祝いする。


「うん、ありがとう!」

2人で喜んでいると。


「ぺーん汰!」と聞き覚えのある声。

「えっ?」とペン汰は、声の聞こえた方へ振り向く。


 そこには、ソータが立っていた。

「なんだよお前!いきなり3階級の昇進かよぉ〜」とソータがペン汰の肩に手を置く。

「ソータ!久しぶり!って言うかいつの間に部屋に入ったんだよぉ」ペン汰とレインはびっくりしている。

「へへーん、びっくりしただろ!昇進こそしてないけど、俺の隠密行動は隊でも指折りだぞ!」とソータは自慢そうに話す。


「ほんとにびっくりだよ!どうしたの?」とペン汰。

「話すと長くなるんだけどな…ライルさんって思っていたよりスパルタでさ…魔獣のいる山で3日生き残れ、から始まり…」と苦労話を話し始める。


「うわぁ、ライルさん…ヤバい人だったんだ…」とペン汰とレインは引いている。


「そうだろー。本当に命懸けだったんだぞ。でも、そのお陰で、お前達ぐらいなら気付かれずに部屋に入れるぐらいの実力がついた!ちなみに戦闘も強くなったぞ!」とソータが腕を組み自慢そうに話す。


「おぉ!ソータお兄ちゃんすごい」ペン汰が手を叩く。


「まぁ、それは置いといて…」ソータが真剣な顔になる。


「ペン汰に知っておいてほしい事がある…」とソータが小声で話し始める。



 

 

 

 

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