第23話 僕だけの戦気
「ペン汰!だいぶ攻めの意識が身についてきたみたいだな!」とショウ。
攻めを意識し始めてから約1ヶ月。ペン汰は、意識せずとも相手を倒すところまでのイメージができるようになっていた。
「あとは、応用だな。相手の戦型が変わっても対応できれば、一人前だ!」とショウは笑顔で話す。
「ありがとうございます!ここまで来れたのはショウさんのお陰です!」とペン汰。
「まぁ、頑張ったのはお前だからな。とはいえ、まだお前には負けないぞ?地力はお前の方が上でも、経験の差があるからな」とショウは、笑っている。
「よし、じゃあ今日もやろう!構えて」と2人は構える。
「今日からは、少し戦型を変えるからな」とショウ。
(どんな型だろう…でも、僕は前に出るだけだ)
とペン汰は、ショウの懐に飛び込む。
ガチン。ショウは、ガッチリ受けてペン汰の勢いを止める。
「うっ」と勢いを止められたペン汰は、次への反応が遅れる。
「そらっ」とショウは、剣を巻き込むように下へ払う。
反応の遅れたペン汰は、剣を払われ下方に体勢を崩す。
と同時にペン汰の頭上に剣が振り下ろされる。
「参りました」とペン汰。
「いきなり型が変わると難しいだろ?」とショウ。
「はい、対応が遅れると一瞬パニックになって簡単に崩されちゃいます」ペン汰はションボリ。
「そうだな。今お前は、攻めに意識が向きすぎている。まぁ、攻めろと言ったのは俺だが」とショウは笑う。
「ステップみたいなもんだな。次は攻めと守りのバランス。元々守りは誰よりも上手いお前だ。そう難しくはないだろう。バランスの感覚は、それぞれ違うからな」と笑顔のショウ。
「ここからだ。お前が以前考えていた相手の思考を読む、と言うのはここで生かされる」とショウは真剣な顔に戻る。
「それを踏まえて、もう一度やるぞ」と2人は構える。
「俺の型は、何が来るかわからんぞ。じゃあいくぞ」とショウは、いきなり踏み込んでくる。
ペン汰は、動きをよく見ていた。
横一閃に対して完璧に防いだ。ショウは、一度下がって体勢を立て直す。
そこで、ペン汰は、一気に飛び込んで縦一閃。
しかし読まれて弾かれる。ペン汰も一旦距離をとった。
今度はショウが踏み込む…縦一閃の動き。ペン汰は動きを見て上段のガードをしようと腕が少し動く。
そこに合わせてショウは、突きに切り替える。
その動きを見てペン汰は、無理やり体を反転させようとするが、動きが鈍い。
ギリギリかわした。
(違う、こうじゃない。見て動いても間に合わない)
ペン汰は、焦る。
焦るペン汰の脳裏に声が響く。
「ペン汰…目に見えるものだけを信じるな。流れを感じるんだよ」おじいちゃんの声だ。
ペン汰は、自然と目を閉じていた。
(そうだ、感じるんだ…流れを…思考を…)
ペン汰のペンダントが光り始める。
辺りを水のような気が包む。
水は流れとなってペン汰に向けて流れ込む。
(感じる。ショウさんの考えが、動きが…避けた僕に向けて2撃目の突きが…くる。だから僕は…)
覚悟が決まったペン汰に向けて流れが集約されていく。
止まった時間が動き出すかのように少しずつ時間が流れる。
体を反転させ体勢が崩れていたペン汰は、その勢いに逆らわず反転しながら下方に潜り込む。
2撃目の突きを出そうとしていたショウは、腕を引いた状態。
下方に潜りったペン汰は、体ごとショウに飛び上がるように背中で体当たりする。
(ショウさんの体が揺らいだ)
ペン汰は、体を反転させて横一閃。
ショウは、体当たりの衝撃で体が後方に逸れている。ガードが間に合わない。
ドスッ。ペン汰の木剣がショウの左脇腹に直撃した。
「うっ」とショウは腹を抱えてしゃがみ込む。
「あぁ!!ショウさんごめんなさい!」とペン汰は、慌てる。
「ううっ…効いたなぁ」と言いながらショウが立ち上がる。
「だ…大丈夫ですか?」とペン汰は、ショウの体を支えようとする。
「大丈夫大丈夫!変に受け止めようとしたから、余計に効いてしまった」とショウは、笑っている。
「しかし、今の動きは何だ?白い戦気のようなものに包まれて…ペン汰が消えたと思ったら、下から体当たりだ」と腕を組んで考えるショウ。
「リュウ隊長から試験の話は聞いてたけど…とんでもないな」とショウはペン汰を見る。
「すいません、まだ全然コントロール出来なくて…正直どんな力なのかもわかってないんです」とペン汰。
「うーん、受けてみての感想だが、あの白い気が戦気なのは間違いない。ペン汰自身はどんな感覚だ?」とショウ。
「そうですね…水のようなものに包まれて。時間が止まったような感覚になるんです。それで、相手の思考が流れて来て。それが言葉だったり映像だったりするんです」とペン汰。
ショウは、「なるほど…」と考え込む。
ショウは、ゆっくり話し始める。
「あくまで仮説だが、時間が止まっているというよりは、ペン汰の思考が加速してると考える方が自然だろうな。俺は、時間が止まっている感覚は全然無かった。それで、相手の思考を読み取ってペン汰の思考に映し出す…そんな感じか」とショウ。
「いずれにしても、敵となれば恐ろしい力だな」ショウはしかめ面になっている。
「この感覚を、常に使えるように頑張ってたんです」とペン汰。
「うん、これは、お前だけの大きな武器になりそうだ。磨けば光るってやつだな!」とショウは、笑顔。
「俺が思うに、俺だけじゃなく色々な相手と戦う方が良さそうだ。俺から皆んなに伝えておくから、明日から全員とやってみろ!」とショウは、ペン汰の肩を叩く。
「はい!ありがとうございます!頑張ります」とペン汰は嬉しそうな表情。
「よし、じゃあ今日は終わりだ!明日からガンガンいくぞ!」とショウ
「はい!ありがとうございました」とペン汰は頭を下げた。
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