第22話 目標と手段
数週間後の対人練習
ペン汰は、毎日ショウに頼んで対人練習をしていた。
「いくぞペン汰!」とショウがペン汰に切り込む。
「はいっ!」とペン汰は受けに入る。
ペン汰は、しっかり受けれているが。
「おい!ペン汰。受けが上手いのはわかった。もっと攻めろ」とショウが一喝。
ペン汰は、攻めに移ろうとするがなかなかタイミングが掴めない。
(あの感覚が…こない。なんで…)
「おい、一回止めるぞ」とショウ。
「すいません」ペン汰は、気落ちする。
目の前が真っ暗になったような気持ちになっていた。
「そんな気落ちするな。言いたくはないが、お前は俺たちより強いよ」とショウ。
「えっ?だって僕、何日も訓練してるのに、対人戦で攻めれてなくて…全然」とペン汰。
「この数週間、お前の訓練見てたけど。お前は頭が良いから、隊列行動は何も問題無かった」とショウはニコリと笑う。
「だが、個人戦闘では、それが発揮出来てない。自分なりに理由は、わかるか?」とショウは問う。
「…理由…と言うか、相手が何を考えているかを知りたくて、相手の行動の先を読むことに集中してました」とペン汰。
ショウは、笑う。
「まぁ、それは悪いことじゃない。むしろ必要な事だな。だが、お前はなんのために行動の先読みをしてるんだ?」ショウは、ペン汰を見る。
「ん?なんのために…相手の思考読んで…先回りして…」ペン汰は、考える。
「先回りして………」
ショウは、大笑いする。
「やはり、考えてなかったか。お前は頭が良いから、相手の思考を読むのは上手い。だが…相手の思考を、読むのは手段だ!
ペン汰…お前は、それが目的になっている。
その先お前は何がしたいんだ?
相手にどうなって欲しい?
自分はどうなりたい?」そこが重要なんだよ。
ペン汰は、驚いた。真っ暗になっていた道に光が差すような気分になった。
(そうか、必要なのはその先だったんだ)
「目的や目標の為に手段を磨くのは重要だ。だが手段が目的になっては先がない。だから、お前は受けれても攻めれない。その先のビジョンがないからだ」
ショウは、ペン汰の肩を叩く。
「今夜、そのあたりを整理して考えてみな。そしたら、目標の為に色んなことを割り切って考えられるだろ」と言うとショウは、個人練習に戻って行った
ペン汰は、部屋に戻って考えた。
「そうか、あの感覚になる事ばっかり考えてた……それじゃダメだよね。
僕の目標…おじいちゃんを探しにいく事。
その為に…強くなって国に認められて…旅に出る。
強くなる為に…時には相手を打ち負かす覚悟が必要…うん。これでいい。今は、強くなる為に相手を倒す事に集中する!」ペン汰は決意した。
コンコンとドアを叩く音がする。
「ペン汰?いる?」とレインの声がする。
「いるよ、どうぞ」とペン汰。
レインはペン汰の部屋に入る。
「ペン汰、ずっと悩んでるみたいだけど…大丈夫?私が余計な事言ったからだよね?」と心配そうなレイン。
「大丈夫、ありがとう。確かにずっと悩んでたけど、今日ショウさんにアドバイスもらったら吹っ切れた!」と笑顔のペン汰。
「ほんとは…その役私がしたかったんだけどな…」とレインが呟く。
「え?何?」とペン汰。
「なんでもない!吹っ切れたなら良かった。私もかなり強くなったよ。ペン汰も頑張って」とレインは笑顔になる。
「うん!ありがとう。明日からも頑張ろ」とペン汰は、お礼を言う。
「うん!じゃあおやすみ」とレインが自室に戻る。
(ありがとう、レイン。元気出たよ)
ペン汰は、眠る。
――次の日の個人練習。
「よし、ペン汰。今日もやるか!」とショウが肩をぐるぐる回しながらペン汰の所へ歩いていく。
「はい!お願いします」とペン汰。
「じゃあ構えて」とショウとペン汰は構える。
(おっ、ペン汰の目つきが変わった。吹っ切れたか)
ショウは、ニコッと笑って真剣な顔つきになる。
「いくぞ」とショウが仕掛けようとした時。
「はぁっ!」と、ペン汰はすでに懐に潜り込んで横一閃を放っていた。
「おっと」ショウは、剣を縦に持ちギリギリ止めた。
しかし、ペン汰は諦めずにそのまま脇をするりと抜けてショウの後方へ回る。
と同時に縦型一閃。
ショウは、体を反転するが、受けきれずにギリギリかわすのみ。体勢を崩した所に喉元に突きが飛ぶ。
ペン汰の流れるような攻撃にショウは避けきれない。突きは、喉元ギリギリで止まった。
「まいったよ」とショウ。
「ありがとうございます。昨日のショウさんの言葉で、最後までイメージする事が出来ました」と頭を下げるペン汰。
(まだあの感覚は戻らない。でも、今はこれを繰り返して体に覚えさせるんだ)
ペン汰は、真剣な顔つきに変わる。
「よし!まだまだやるぞ」とショウは楽しそうにしている。
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