第18話 川の流れと思考の流れ
ペン汰が修行を始めて4日がたった。
今だにペン汰は、川でぷかぷか浮いたり潜ったり。
「うーん。水の中にいると心が落ち着いて、意識が内側に向く感覚は、なんとなく掴めてるんだけど…他人と繋がるって…全然わかんない」
ペン汰がぷかぷか浮いていると、突然の大雨。
「そろそろ帰らないと危ないなぁ」とペン汰が陸に上がろうとした瞬間。
ドドドドッと上流から濁流が流れ込んできた。
「えっ、えっ」ペン汰は、濁流に呑まれてしまった。
ペン汰は、頑張って泳ごうとするが流れに抗えない。
「これは…無理だ」ペン汰は、流れに身を任せる。
しばらくすると、流れの勢いで陸地に投げ出された。
「ふぅ、やっと陸に上がれた…同じ川なのに、勢いが強いとこんなに違うのか」とペン汰は、雨に打たれながら考えた。
「怒り…みたいな…感情…そうか!水の流れは感情に似ているんだ。あのレインさんの時の感覚って…感情…思考」
「水は、ありのままを映してくれる…そうか!
相手の事を知りたいという気持ち!相手を感じる心が大事なんだね!おじいちゃん…僕はそれを素直に受け取ればいい。なんとなくわかったよ」ペン汰は、ムクっと起き上がる。
「さぁ、帰ろう」ペン汰は、家に向かって歩いた。
それから数日
「おーいペン汰!迎えに来たぞ!」とマユキ
「はい!ついに来ましたか。準備して行きます」とペン汰は、帰りの準備を行う。
「おじいちゃん…また来るね」とペン汰は、マユキと孤児院へ向かった。もう、涙は流さない。
孤児院へ到着すると、ソータがマユキの部屋で待っていた。
「よっ!ペン汰久しぶり!」とソータは元気に手を挙げる。
「うん!1周間ぶりだね」とペン汰も答える。
2人も席に着いた。テーブルには封筒が2つ置いてある。
「まず、どちらからあける?」とマユキ。
「はい!俺から!寝てた俺にはスカウト来てないでしょ」とソータは、笑う。
「そんな事ないよ!2次試験まで頑張ってたじゃん!」とペン汰は、励ます。
「まぁ、見てみようか」とマユキはソータ宛の封筒を開ける。
「……なるほど」とマユキは、用紙をソータに見せる。
「……えっ。来てるじゃん!国家間諜報部隊…ライルさんのとこだ」ソータびっくりした顔をしている。
「ソータやったね!ライルさんは、最初からずっと見てたもんね」ペン汰は、両手を挙げて喜んでいる。
「いや、まぁ…これはズルみたいなもんだな」とマユキが苦笑い。
「えっ?なにが?ソータはズルしてないよ!」とペン汰はマユキを怒る。
「ちがうちがう!ズルはライルだ。正直新人でソータほどの体力と剣技を持つ者なんて稀なんだよ。ソータが模擬戦に出ていれば、他にも引くて数多だったはず」とマユキ。
「なるほど!そう言う事か」とペン汰
「そんな人材を独り占めだぞ?ズルだろう」マユキは、笑う。
「それに加えて、小さい時からライルは知っているからな。ソータの性格の良さを」マユキは自慢げに話す。
「なんでマユキ先生が嬉しそうなんだよ」とソータは笑う。
マユキは、真剣な表情に戻りソータを見る。
「ソータこれは、お前が決める事だ。どうする?」
ソータも真剣な表情で、「ライルさんは、こんな俺をスカウトしてくれたんだ。絶対に期待を裏切らない!」と拳を握る。
「よし!よく言った!」とマユキ
「うん!ソータならやれるよ」とペン汰。
「次は、ペン汰だな」とマユキがペン汰宛の封筒を開ける。
「…………うーん」とマユキが困った顔をしている。
「えっ?まさか、僕だけスカウトないの?」とペン汰は不安な表情。
「……まぁ、見てみろ」とマユキは、ペン汰に用紙を渡す。
「えっ?えっ?こんなに?」とびっくりした表情のペン汰。
「うん、まぁほぼ全部って感じだな」とマユキは、苦笑い。
「逆に難しくないか?」とソータも笑う。
マユキは、真っ直ぐペン汰を見て話す。
「ソータには、お前が決める事だと言っておいて、こんな事言うのもなんだが…私の独り言ぐらいの気持ちで、聞いていてくれ」と言うと。ペン汰が持つ用紙の一部を指差した。
「ここに、特別戦略部隊の名がある。隊長の名は、わかるか?」とペン汰に尋ねる。
「うん、ゼノさんだよね」とペン汰は答える。
「そうだ。正直ここには入ってほしくない」とマユキ
「……」ペン汰は、用紙を黙ってみている。
「もちろん、理由もある。今のゼノは、危ういんだ。ゼノという男は、直属ではないが、もともと私の部下にあたる。家も近かったから、小さい時から知っている」マユキは、目を閉じている。
「小さい時のあいつは、素直で賢くて真面目な子だった。今でも賢いのは変わらないが…あんなに冷たい目をする子じゃなかった」とマユキ。
「えっ?昔は違ったの?」とペン汰。
「あぁ…昔は…というより特別戦略部隊に入るまでだな。今の部隊に入ってから、いつの間にか冷たい空気を放つようになった。私からすると、不自然な程に変わっているんだよ」とマユキ
「そっか…わかったよ、マユキさん」とペン汰は考える。
「まぁ…決めるのはお前だ。よく考えるんだな」マユキは席を立ち、ペン汰の肩をポンっと叩いて部屋を出た。
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