第14話 白い戦気?
ペン汰とレインの打ち合いが続くが、お互いに決め手に欠けている。
なかなか勝負がつかないまま残り時間が1分を切ろうとしていた。
「このまま時間切れかな。まぁ、模擬戦だから、勝負をつける必要もないんだが…」ゲンが呟く
「せっかくなら、スッキリ勝負をつけたいよな!」
リュウは、変わらずワクワクとした顔をしている。
「お前、俺の話きいてたか?」ゲンがリュウの顔をみる。
「まて、動くぞ…」とリュウが身を乗り出す。
お互い蒼気をコントロールしながら、相手の動きを読む動きが続いていため、疲労がみえる。
「ペン汰、そろそろ疲れたんじゃないの?」とレイン
「まだまだですよ。レインさんこそ」ペン汰は強がって笑顔を見せる。
「私はまだまだやれるよ」とレインがいきなり縦一閃を仕掛ける。「甘いよレインさん」ペン汰が動きを読んで払いに剣を振り上げた瞬間。
「ここだ!」レインが持ち手を入れ替えて石突での突きに切り替える。
レインの虚をついた動きとコンパクトな突きに、ペン汰の反応が一瞬遅れる。
「まだ!」っとペン汰が無理矢理上から石突を払いにいく。
ガチッ!なんとかとどいた。
突きの軌道が下方にズレる。と、同時にレインの体制も崩れてしまった。
レインが前のめりになる。
ペン汰も払った剣を戻す時間がない。
「やばい、剣を戻さないとレインの顔面に直撃するぞ!」リュウが身を乗り出して叫ぶ。
係も飛び込むが届きそうにない。
「…やばい、疲れて体が反応してくれない…」レインは、半ば諦めていた。
「くそっ!うごけ!どうにかしなきゃ」ペン汰も疲労でうまく反応できないが必死に剣を戻そうとする。
「ぶつかる!」とペン汰が目を瞑った瞬間。
ペンダントが眩しい光を放った。ペン汰の蒼気に白い戦気が混ざり合っていく。
ペン汰とレインが水のようなものに包まれる。
「あれっ、またこの感覚。時間が止まったような…
レインさん…?諦めてる?
ねぇ…レインさん!諦めないで!体を左に倒すんだ。」ペン汰にレインの思考が流れ、ペン汰は、それに反応して声を上げた。
(ねぇ…レインさん…体を倒し…)レインの頭にペン汰の思考が流れ込む。
「なに?ペン汰?何これ…止まってる?」レインは戸惑うが、剣が顔の目の前まで来ている。
「このままじゃぶつかる。倒れるんだね…わかった。ペン汰…信じるよ」とレインは意識を失いながら左へ体を倒しはじめた。
「レインさん!通じた!」ペン汰は、レインの体が左下方に倒れていくのを確認した。
「じゃあ僕は、全力で剣の軌道をずらすだけだ」
覚悟を決めた2人の時間が流れ始める。水中にいるような感覚も、はれていく。
「うぅー」とペン汰は、残った力を振り絞り体を左側に反転させて全身で剣の軌道をずらす。
ドサッ。レインは地面に倒れ込んだ。
剣の軌道は、レインの羽毛をかすめて避けられた。
ペン汰もそのまま左側に倒れ込む。
係がレインを抱き抱える。「無事だ!」と声をあげる。
ペン汰は「良かった」と目を閉じて倒れ込む。蒼気と共に白い気も消える。
「医務室だ!2人を運べ!」と係が急いで2人を医務室に運んだ。
――観覧席では
「おい、なんだ今のは」ゲンがリュウの顔をみる。
「わからん…が、戦気だろう。色は…白?透明?」リュウが首を傾げる。
「いずれにしても、あんな戦気見た事ないぞ」ゲンが考え込んでいる。
「あいつ…まさか…白親の…いや、まさかな」とゼノが小声で呟く。
「おいゼノさんよ、今、なんかいったよな?」ヒルデが問う。
「貴様には関係のない事だ…しかし、私にも白色がかった色に見えたな。蒼気でない事は、確かだ」ゼノが深刻な表情を見せている。
「冷静な特戦隊長様が珍しい、お顔だな」ヒルデが笑いながら話す。
「少し驚いただけだ。それより、彼はうちが預かろう。帝国の戦略を任されている私としては、あの力は無視できん」
なにか、深く考えている様子。
「ふざけんな!我々は、スカウトするだけだと決められているだろう。余計な手出しはするな!」とリュウが憤怒した。
「……仕方ない。今回は、スカウトだけにしてやろう」とゼノ。
「今回はってなんだよ」リュウが詰め寄る。
「言葉通りだ。それにしても…リュウ。あんまり調子に乗るなよ」ゼノが睨む。
ゼノの体から蒼気が滲み出ている。
「やる気か?相手になるぜ?」リュウがニヤリと笑う。
(リュウさんのスイッチが入ったら大変だ)とスーツの兵が間に入る。
「はい、そこまでにしてください。
そろそろ試験の正式な結果発表が始まります。
隊長様方は、ホールの来賓席へお願い致します」
「じゃあいくか」ゲンとヒルデが立ち上がる。
他隊長も腰をあげる。
「しゃーねぇ。続きは今度な。ゼノ様?」リュウは、まだニヤついている。
「……」何も言わず席を立つゼノ。
それぞれホールへ向かう。
――医務室では
意識を失い運び込まれたペン汰とレインがソータの横で寝ていた。
「おーい、ペン汰!そろそろ目を覚せよぉ」
「おーい、おーい」
ソータがペン汰に呼びかける。
「おい!うるさいよ」レインが目を覚ます。
「あれ?お嬢さん!おはよう」ソータがニコッと笑う。
「ここに運び込まれてから、どのくらいたつ?」レインがソータに尋ねる。
「んー時計ないからわからないけど、30分くらいかな?」ソータは、頭をひねりながら答える。
「そうか、そのぐらいか。なら間に合うな」とレイン
「間に合うって何に?」ソータは尋ねる。
「ばかなの?結果発表が、あるでしょう」レインはため息をつきながら答える。
「出るつもり?ここに運び込まれてきたとき気を失ってたよ?動けるの?」ソータは心配そうに話す。
「この程度、すぐに動ける。ただの疲労だ。それよりも、そいつは大丈夫なのか?」とレインは、ペン汰をみる。
「おーいペン汰!美人さんが心配してるぞー。
いい加減おきろー」と枕をなげる。
枕は綺麗にペン汰の顔にヒットした。
「あたた、誰だよ?」ペン汰は、起き上がる。
「あー!ソータ!大丈夫なの?試合中も心配してたんだよ!」ペン汰はソータをみる。
「俺は、今からでも歩けるっての、それよりお前…だいぶ失礼な事言ったぞ。今。」とソータは真剣な顔をしている。
「え?」ペン汰は、恐る恐るレインをみる。
レインは、ペン汰を睨んでいる。
「なぁ、ペン汰くん…今のは、ほんとかな?試合中に他人の心配をしてたのかな?余裕あるね?カッコいいね?もう一回やろうか?」レインの顔は、どんどん険しくなる。
「あ、ごめんなさい!僕…バカ正直なんです!ってよくソータに言われるんです」本気で謝るペン汰。
「ぶっ」とソータは、笑う。
「何本気で謝ってんだよ!冗談だろ今の。
しかも自分でバカ正直って。
ほんと…バカ正直も、いい加減にしろって」ソータは大笑いしている。
「ほんとだな。でも、嫌いじゃないよ」とレインも笑っている。
「あ、冗談か。良かった。ごめんさない」と照れるペン汰。
そこに案内係が入ってくる。
「失礼しますね。今から結果発表があるのですが…移動は可能ですか?」
「はいっ」と3人は返事する。
「では、ホールまでお願いします」案内係は、3人をホールに案内する。
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