第12話 僕の目標
12話〜僕の目標
「お待たせしました!」
スーツの兵は、控え室へ戻ってきた。
張り出された対戦表のもとへ歩いていく。
対戦表の横に立って話し始める。
「対戦表は、見て頂けたでしょうか。
ご覧の通り、今回の試験合格者は42名。したがって、模擬戦の対戦組数は21組となります。会場は、室内闘技場で行います。
組数が、多いため2組ずつ試合してもらう事になりましたが…先だってお話した通り、各隊のトップの方々が2階席でご覧になっていらっしゃいます。
気合を入れて頑張りましょう」
「なお、先ほどのトラブルで、残念ながらソータ君はドクターストップとなりましたので、対戦相手の方は、型の披露となります」
――その頃医務室では。
ベッドに横になってすぐ気を失ったソータ。
しばらくして、ようやく目を覚ました。
「ソータ、身体はどうなの?」
ペン汰が心配そうに付き添っている。
「どうって事ないよ。ちょっと頭打っただけ」
とソータは、笑っている。
「そんな事より、ペン汰!3次試験があるだろ?
早く控え室に行け!」ソータがドアを指差す。
「いいよ、ソータが動けるようなるまでいるよ」
ペン汰は、首を横に振る。
「ばかペン汰!甘えた事言ってんな!俺は大丈夫だから早く行け!」ソータは、声を荒げている。
ペン汰は、下を向いて首を横に振った。
「おい!お前の目標はなんだ!」
ソータが興奮して身体をおこす。
「ソータ!まだ…」ペン汰がソータの体を支えようと手を出すが、ソータは手を払う。
「目標は、なんだ!」
ペン汰は、ゆっくりソータを見る。
「…おじいちゃんを探しにいく」
「……だけど、今は…」とペン汰が言いかける。
ソータがペン汰の言葉に割って入る。
「おじいちゃんを探しにいくために、大切なのは今じゃないのかよ!」
ソータは、必死な顔をしている。
ソータの顔を見てペン汰は、頷く。
「うん、そうだよね。いくよ。ソータ」
ペン汰、急いで控え室に戻った。
ペン汰が部屋を出たあと、ソータは、バタンと横になった。
(お人よしペン汰。頑張れよ…ちょっと…うごきすぎた…)
興奮したソータは、スヤスヤと眠った。
控え室の前まで来たペン汰。
ドアを開けるようとした瞬間、
ガチャ。スーツの兵隊がドアを開けて出てきた。
「あぁ、ペン汰くん。ソータ君の様子はどうです?」
ペン汰は「大丈夫です」と頷く。
スーツの兵隊は、安堵の表情。
「そうか、何よりだ。
それはそうと、模擬戦参加するんだよね?」
ペン汰は、力強く頷く。
「うん、よかった。じゃあ、対戦表を確認してください。
1試合10分、2組ずつやりますからね。
頑張ってください」と笑顔で話す。
「はい、頑張ります。説明ありがとうございます」
ペン汰は、頭を下げた。
(対戦表みなきゃ)ペン汰急いで対戦表を見に行った。
対戦表を確認してみる。
(最後の組か。時間までどうしよう)
「ペン汰君…だっけ?」後ろから声かけられる。
「はい?」ペン汰は、振り返る。
ペン汰と同じイワトビ系の雌。しなやかな体つきだが、威厳を感じさせる目つきにペン汰は一瞬目を奪われる。
「あ、あの、ペン汰です。な、なにか?」
ペン汰は、緊張した様子で返事する。
「私の名前は、レイン。もう一度対戦表を確認してみて?」
レインは、ニコッと笑う
「あ、はい」ペン汰は、対戦表を確認する。
(あ、僕の対戦相手だ、こんな綺麗な人と…)
「よろしく、と言いたいとこだけど。
私が女だからって、手加減したら許さない!
私も試験突破してきたんだからね。」
真剣な表情で、真っ直ぐにペン汰を見ている。
「わかりました。僕にも目標があります。もちろん全力で戦います」
レインの雰囲気に圧倒されるペン汰だが、しっかり言葉を返した。
レインの顔が緩む。
「そう。楽しくなりそうね。でも、わたしその辺の兵士より全然強いからね。
あなたの実力…楽しみにしておくね」
レインは、自信に満ちた表情で控え室を出る。
「強そうな雰囲気の人だったなぁ。マユキさんとは、また違うタイプの女性だ。
でも、模擬戦は、勝ち負けじゃない。とにかく、今の全力で挑もう」
ペン汰は、数回軽くジャンプして気合いを入れる。
「他の人の戦い方を見ておいた方がいいよね。
2階が観覧席だったかな…」
ペン汰は、室内闘技場の2階にいくことにした。
2階に着くと。明らかに雰囲気の違う人達が座っている場所が目に飛び込む。
「多分、あれが隊の代表の人達かな…
同じ軍服だけど、それぞれ個性的な飾り付けで違う服みたいに見える…」
「カッコいいなぁ」
ペン汰は、見惚れていた。
「君が、ペン汰君かな?」後ろから声をかけられる。
「はい」ペン汰は、振り向く。
代表達と同じ軍服だが、黒いコートを着ている。
「あれっ、クロ…」(いや、違う)
ペン汰は、言いかけて、やめた。
「初めまして、ペン汰です」頭を下げた。
「息子から聞いたよ。田舎者が紛れ込んでいるとな。
今年は、運営がコソコソとやっているから、何事かと思えば…こんな田舎の小僧を…まぁ良い。
せいぜい模擬戦で恥をかいてこい」
黒コートの男は、そう吐き捨てて去っていった。
「なんだったんだ。息子って。クロウさんに似ていたけど…」
ペン汰は、考え込む。
そこへ、周りを気にしながらスーツの兵隊が近寄る。
「ペン汰君…」ペン汰は、振り返る。
「さっきの人に、何か言われたかい?」スーツの兵はコソコソと話しかける。
「いや、特に何も。田舎者がどうとかって」
兵隊は、少し考えて。
「そうか、それなら良いんだ。あまりあの方に近づかないように気をつけていてくれ。変わった人だから」
スーツの兵隊は、苦笑いをしている。
「そうなんですか、わかりました」とペン汰は答える。
「ペン汰君は、最後の組だったね。他の模擬戦を見て勉強かい?偉いね。
それじゃあ、行くね」
スーツの兵隊は、代表達の方へ歩いていった。
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