創作する時

隠れ豆粒

音楽とか小説とか

ㅤいいことを思いついた。こんなストーリー、こんなメロディ、こんなセリフ、こんな歌詞……。

ㅤなにかを思いついた時のあのワクワク感や期待感とは裏腹に、実際に創作し始めてみると……いつも上手くいかない。思ってたのと違う。長編にするつもりがたったのに三千文字程度。伝えたいことがまとまらない。いいメロディなのに編曲が上手くいかない。

ㅤ小説も音楽も、いつも頭の中で浮かんだ時が一番美しくて、それを形にしようとすると醜くなっていく。最初に抱いたワクワク感や期待感はもうどこにもなくなっている。今まで納得のいく作品を完成させた事があるだろうか。私の能力が低いというのもあるだろうが、それでも、こんなにも上手くいかないものだろうか。

ㅤ小説のネタを思いついて、直近で「ランナーとマーメイド」という小説を書いた。私自身がランナーで、最近かの有名なネズミの国の人魚の映画を見返したのもあり、脚を酷使するランナーと脚に憧れを抱くマーメイドという組み合わせは面白いのではないか、なんて思いついて書き始めたものである。最初は少なくとも一万文字くらいは書こうと思っていた。しかし、書き終わるとたったの四千文字であった。文字数が大事かと言われるとそうではないが、納得のいかない作品にはなったと思う。

ㅤ他にも、十万文字を目標にした小説を書いている。これはちゃんと起承転結を思いついて、それぞれで二万五千文字の一章ずつにすれば十万文字になると考えていた。しかし、最初の一章の第四話でつまずいている。書けば書くほど迷いが生まれ、時間が経てば経つほど登場人物の性格が変わっていくような気がしてならない。そして、書き始めてからかれこれ5年経った今でも、未だ手を付けられないでいる。この作品を諦めるべきなのか……。諦めたくはないし、いつか書き上げたい。でも上手く書けない。いっそあらすじだけ書いて、続きを誰かに書いてもらおうか。いや、自分の手で作り上げたい。……と言ったふうに、なにも前に進まないのである。無念。

ㅤ音楽にしても同じである。サビのワンフレーズが歌詞とメロディ同時に降ってくる時がある。これはいい曲が出来そうだ!ㅤそう意気込んでいざギターを片手にパソコンとにらめっこをする。しかしそのワンフレーズしか出来ず、手癖で作り上げていくと他の作品と似たり寄ったりのものが出来上がる。酷い時はギターを持ったままスマホを眺め、気づけば日が暮れている。勘弁してくれ。

ㅤどうしたら上手くいくのか、世に名を馳せるアーティストや作家達は、いったいどのようにして素晴らしい作品を作り上げているのか。様々な葛藤がない訳では無いだろうが、それでも最後は完成させる。それは本当に凄いことだと思う。

ㅤとは言っても、私も作品を完成させてきている。しかしそこには妥協がある。このくらいでいいか、と妥協してしまう癖がある。簡単に諦めてしまえるところがある。ある程度の完成度までいったところで、その先を追い求めなくなってしまう。もしもその先を諦めずに追い求めているのなら、私はひとつも作品を残せないであろう。

ㅤしかし、それでもまた、新規作成をしてしまうのである。

ㅤワクワク感や期待感の先に、いい作品と出逢えると思ってしまうのである。



ㅤなんてこったい。

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