Corner Eleven: Echoes Within (EP. 03)
第11コーナー。時速300マイルを超えたままマシンをイン側に寄せ、縁石にタイヤをかすらせる。その物理的な振動が、彼の意識を打った。
同時に、それは今の振動ではない。
彼の魂の奥底に錆びついていた、もっと古い記憶の残響が、呼び覚まされていた。
瞬間、彼の視界が白む。
アスファルトの代わりに、ひしゃげた金属の天井が見える。焦げ付く匂いが鼻をつく。鼓膜を打つ骨が砕ける音。そして、絶対的な無音。動かない手足。
絶望が、彼の意識を完全に飲み込んだ、あの日の記憶。
「世界の頂点にいた自分が、なぜ動けない」「歓声はどこへ消えた」「この静寂が、自分の終わりなのか」「恐ろしい」――そんな声なき叫びが、彼の内で木霊していた。
ゆえに彼の心臓は、激しく鼓動する。その心拍数は瞬時に毎分180を超え、血中のアドレナリン濃度は致死量に迫る。
息が詰まる。
あの無力な肉塊に戻る恐怖が、背筋を凍らせる。
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