第5話

 ホワイトタイガーは王様にこっぴどく怒られました。

動物たちのお部屋の室温をめちゃくちゃにしたのが、自分だと白状したからです。

王様は困ったやつだ、と目の前でしょげているホワイトタイガーを見ながら言いました。

お妃様は、まあ、これでこりたことでしょう、と言い、王様にも、あなたも十分怒ったのだから、最後に何かためになるお話をしてちょうだい、と言いました。

いきなりためになる話、などと言われてもなぁ、と腕を組んで天井を眺める王様でしたが、こんなのはどうだろう、とホワイトタイガーに語りかけました。


「お前が常日頃口にする、「自分の存在いぎ」というものについてだ。お前は自分の歌詞をみんなに聞かせて、有名になりたいと考えているな?」


 ホワイトタイガーは、小さくうなずきました。

 

「俺のかちをみんなに知ってもらいたいんだ。俺が書く歌詞がどんなにすばらしいか。もし、それを認めてくれねぇなら、俺に「かち」はなくなっちまうよ」


「違うな」


 王様があまりに素早く返事をした為、ホワイトタイガーはびっくりしました。

王様は続けます。


「お前の歌詞は、お前のことを書いた歌詞だろう?そんなものに、かちなどない。本当に「かち」があるかどうかは、周りが決めるんだ。もし、お前が周りの人の気持ちをだいべんした歌詞を書いて、それが誰かの元に届けば、ようやくその歌詞に「かち」が宿るんだ」


「誰かの気持ちをだいべん…」


 ホワイトタイガーは、今まで自分の気持ちや、自分のことを書いた歌詞しか歌ったことはありませんでした。

それは、自分がどんなに苦しいとか、どんなに大変とか、うったえた所で、同情などしてくれないのです。

世の中とは、そういうものなのです。

本当に誰かの心にひびくのは、その誰かの「苦しみ」をだいべんした時なのです。

お妃様は、手を鳴らして注意を引きました。


「これで、この話はおしまい。リアム、今の言葉を聞いて、自分に何が足りないか分かったかしら?」


 ホワイトタイガーは、ゆっくりうなずいて、自分のことを振り返りました。


「俺は、今まで周りの動物たちのことを考えたことがなかった。エメルダも同じこと言ってた。もしかしたら、あいつの方が王にふさわしいのかも知れない。俺は、部屋に引きこもるのをやめる。もっと、外の世界に出て、勉強するよ」


 お妃様は満足したように、微笑みました。



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コアラパトロール ーライオンverー oga太 @oga12

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