閑話 高天原社員食堂 “雲上(くもがみ)ダイニング” にて
広く明るい高天原タワー中層フロアの社員食堂“雲上ダイニング”は、昼休みの時間帯を迎え、神々の憩いの場として賑わっている。白銀の柱が天井を支え、光が柔らかく差し込む中、神々は食事を取りつつ、時折談笑の声をあげていた。
「……ねぇ聞いた? 今日の〈神格仕様統合ミーティング〉で、天照大神があの難しい議題を見事にまとめたんだって」
「そうそう。あの静かな声で“八百万の意志”って言われると、なんだか背筋が伸びるよね。俺も何度か鳥肌立ったよ」
「まったく。あの瞬間、会議室の空気が一変したよ。緊張感と尊敬が混ざった独特の空気。議論がどんなに激しくても、最後はあの声でひとつにまとまった」
「うん、天照大神は単なる代表じゃない。神々の心の支えであり、象徴なんだなって改めて思ったよ」
「うちの部署にも“アマ推し”が何人かいるけど、俺まで影響されるとは思わなかった」
「わかるわかる。威圧感はないのに包み込むような光。まさにみんなの“推し神”だよな」
「俺はちょっと会議中に涙ぐんだよ。祈りの儀式を見ているみたいだった」
「同感。正直、あの場にいられることが誇りだった。神格の一員としてだけじゃなく、人としても」
『……って、これ普通の職場の昼休みですよね? なんか神様たちの恋バナを聞いてるみたいで(笑)』
《白咲飛鳥さん、それは“推し神”ができるのは人間も神も同じだからでしょうね。ただ、会議中に泣きそうになるのはどうかと(笑)》
『ですよね! 現場の神々が“推し神”の前だとこんな感じになるなんて、ちょっと意外でした!』
《これも一種の“信仰の形”でしょう。尊敬や信頼が混ざった、感情のひとつの表れです》
『でもまあ、神々の心情にこんなに触れられるとは。実況やっててよかったなあ』
《やはり天照大神のカリスマは唯一無二。組織のトップとしてだけでなく、信仰の象徴としても圧倒的ですね》
『この恋愛トーク、もっと掘り下げたい気もするけど、今日はここまでにしておきましょう(笑)』
《では、次回は祈願OSの初期フィールドテスト現場から、リアルな神々の動きをお伝えします》
窓の外には、晴れ渡る空と悠々と流れる雲が広がっている。静かな神界の日常が、確かな未来へと繋がっていく。
『それでは本日は、高天原タワーより白咲飛鳥がお届けしました。』
《神斎アカリでした。ありがとうございました。》
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