第14話 深まる絆と未来への予感-2
大学三年目の秋から四年目にかけて、葉山悠斗の生活は、まるで沸騰した鍋のように忙しく、そして熱かった。情報工学という専門分野は、学ぶほどにその奥深さと可能性を感じさせたが、卒業研究は想像以上の労力を必要とした。深夜まで研究室にこもり、複雑なプログラムのバグと格闘する日々。しかし、それ以上に彼の神経をすり減らしたのは、本格化した就職活動だった。
大学のキャリアセンターに通い詰め、膨大な数の企業エントリーシートを作成し、説明会をはしごする。面接では、練り上げた志望動機や自己PRも、時に面接官の鋭い質問の前に崩れ去る。周囲の友人たちも皆、ピリピリとした空気を纏い、内定が出た者への羨望と、まだ決まらない者への焦りが入り混じる。不採用通知が届くたびに、胸の奥に鉛のような重さが沈んだ。このまま、自分は社会から必要とされないのではないか。漠然とした恐怖が、悠斗の心を襲う。
そんな多忙でストレスフルな日々の中で、佐倉葵との現実の関係は、悠斗にとっての「日々の生活の大きな存在」となっていた。彼女もまた、同じ学科で就職活動に奮闘し、研究室での課題に追われている。
「あー、もう無理!今日の面接、絶対落ちた!」
学食でランチを共にしながら、悠斗は力なく呟いた。葵は、何も言わずに悠斗の顔色を伺い、そっと彼の手に触れた。その小さな、柔らかな温もりが、悠斗の心にじんわりと染み渡る。
「私もだよ。この前なんて、プレゼンで頭真っ白になっちゃって……。でも、お互い頑張ろうね」
彼女の優しい言葉と、同じ苦しみを共有しているという事実が、悠斗をどれほど安心させたことだろう。互いに愚痴を聞き、励まし合う時間が、何よりも心の支えとなった。
研究室の締め切りが迫り、徹夜続きで心身ともに疲労困憊の時でも、葵はさりげなく栄養ドリンクを差し入れてくれたり、短い休憩時間にカフェでコーヒーを飲んでくれる時間を作ってくれたりした。手を繋ぎ、肩を並べて歩くだけでも、その温もりが悠斗の心を休ませた。現実での肉体関係は、あのクリスマスのキス以降、進展していない。焦れったさは、いまだ悠斗の胸に燻っていた。しかし、就職活動という現実の大きな壁を前に、もはやその戸惑いよりも、葵が隣にいてくれることへの「いつか」への確かな期待と、彼女への深い信頼が勝るようになっていた。
夜になると、疲労困憊で眠りにつく悠斗の意識は、抗いがたい力に誘われるように、葵との甘美な夢の世界へと深く誘われた。夢の中の葵は、現実のストレスや不安を忘れさせ、悠斗の精神的な疲労を癒す、究極の存在だった。
夢の中での悠斗と葵の関係は、もはや現実の延長線上にあるかのように感じられるほどの深化を見せていた。物理的限界が無いことから、二人の肉体的な結びつきは、何度となく繰り返され、「いつ子供ができてもおかしくない関係」にまで深化していく様子を暗示的に描いていく。より深い一体感や官能を求めあう深化、言葉を超えたコミュニケーション、互いの身体の探求、絶頂と虚脱、そして再び相手を求めるサイクルの繰り返しとして、夢は悠斗をどこまでも深く葵へと引き込んだ。
夢の中の悠斗は、葵の体の隅々までを、感覚として「知っていく」ような経験を重ねた。愛撫は、単調になることなく、常に新たなバリエーションを求め、より深く、より官能的な快楽を生み出した。肌と肌が触れ合うたび、彼女の柔らかな肌から熱が伝わり、互いの体が溶け合うような一体感を覚える。彼女の乳房を掌に包み込んだ時の柔らかな弾力は、夢だと分かっていても、現実の悠斗の心を強く揺さぶった。彼女の内側が熱く吸い付くように俺を包み込み、その心地よい圧迫感に、悠斗は夢の中で何度も理性を失いかけた。葵の腰が本能的に俺の動きに呼応して揺れるたび、悠斗の体中の神経が研ぎ澄まされ、快感の波が嵐のように押し寄せた。
夢の中の葵は、いつも悠斗の願望を全て受け入れてくれた。その甘美な体験は、現実の悠斗に、彼女への願望と、いつか現実でもこの関係を築きたいという強い欲求を植え付けていった。夢の中の葵は、悠斗の精神的な疲労を癒す、かけがえのない存在だった。
朝、目覚めると、枕は汗でじっとりと湿っていた。肌にはいつも薄っすらと寝汗が滲み、時には股間が濡れて、下着が夢精による粘り気のある熱を帯びた液体で汚れている。心臓は朝から激しく脈打ち、しばらく動悸が治まらなかった。サッカー部で鍛えられたはずの悠斗の体は、かつてないほどの性的興奮によって体液が分泌されたような痕跡も残していた。夢のリアリティと現実の乖離に戸惑いながらも、悠斗は、葵との未来を強く信じていた。夢の中の彼女の存在が、現実の彼の生活を、そして精神を、確かな形で支えている。それが、この不思議な夢の力なのだと、悠斗は確信していた。
就職活動も終盤に差し掛かり、悠斗はついに、大手ソフトウェア企業から内定を得た。将来が具体的に見え始めると、悠斗は葵との未来を真剣に考え始めた。彼女との将来設計において、葵の存在は当たり前のように、そして非常に大きな重みを持って組み込まれていた。彼女との安定した未来を築くことが、何よりも仕事へのモチベーションとなる。悠斗の心の中では、プロポーズの計画が、漠然とした形ながらも芽生え始めていた。
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