第4話 心霊写真が写る 現場

とある県とある市の、ある廃業商業施設 にて。


「ここさ、昔、火事があって、かなりの人が逃げ遅れて亡くなった現場なんだよね。」

「えっ!そこに、夜、工事に入るんですか?」

「そう。必ず出るって。」

「うわ。」


ここは、とある地方の商店街の中。

店舗の改装工事は、商店街が閉まった夜間に工事に入る。

商店街が開く、翌朝までが工事時間なのだ。


改装工事前の、現地調査の為に、その夜、現場に工事責任者が集合した。

カメラ、メジャースケール、水平器。他。

仕事道具を担いで、今回の現場に入った。


暗い入口から、明りを点ける為に、ブレーカーの所まで、

手元の懐中電灯の明かりを頼りに進む。


何故か、全員、

引っ付いて、一塊になってこわごわ進む、5人の大人達。

「なんか、雰囲気、ありますよね。」

「え?なんの?」

「出そうな。」

「やめろ。」

などと言いつつ、無事にブレーカーをONにして、廃業店舗の明りが一斉に点灯した。

「!!!」

全員が、びっくりして、悲鳴もあげられない。

自分達は、無数のネズミに、周囲を取り囲まれていた。


明りが点灯したので、ネズミ達は、一斉に、波が引くように

ささささーっと、一方向に消えて行った。


一同、呆然。

「なんか……すごいもん見ました。」

「うん。あいつら、どこに行ったんだろう?」

「これから毎晩、あの大群に遭遇するんですかね?」

「まあ、ネズミは、どこの食べ物屋の現場にもいるからね。」

「そういえば、○○の店舗改装工事で、天井裏を覗こうとして、点検口開けて、

首入れたら、周囲がきらきら光ってて、『なんだ?』と思って、照らしたら、

ぶわ~って、ネズミの目に囲まれてたよ。

びっくりして、脚立から落ちた。」

「ひゃ~。マジですか!!」


などと、話しつつ、現地調査をこなして行く、面々。


夏なのに、肌寒い店内。

皮膚表面に立つ鳥肌。

ネズミの気配だと、そう思おうとする面々に、

どう考えても嫌な気配が付きまとう。


『この柱の向こう側に、誰かが居る』

『後ろを振り向いたら、多分子供が居る』


「ちゃっちゃと終わらせて、早く出よう!」

「ここ、マジやばいです。」

「工事期間、最短で。ややこしい内装設計したら、殺す!」

「はい。シンプルに、します。手間かからないヤツ!!」


背中をぞわぞわさせながら、

その夜の、現地調査を巻きで終わらせた。


翌日、現地調査のカメラデータを、いつもの現像屋に持ち込んで、

現像を依頼し、午後に受け取りに行った。


「ここ、どこで撮ったんですか?こんなの、持ち込まないでください。」

と、開口一番に苦情を言われた。

「?なんで?」

「やばいですよ。うち、これからお祓い行って来ます。気持ち悪いから。」

「え?」

「ここで見ないでください。早く持って行って!」

早々に、店を追い出された。


事務所に現像写真を持ち帰って、一人で見るのが怖かったので、

所長にお願いして、一緒に見た。


全ての写真に、写り込んでいた。

オーブとか、そんな優しいモンじゃなかった。

すると、所長が。

「この現場、お前、もう入るな。」

「え?どうするんですか?断るんですか?」

「下請けに振る。」

「え?」

「請けの金額上げればいいから。」

『こわっ!!』



ちなみに、その店舗、現在は廃業し、更地になった後、新たな商業施設として、

明るく賑わっている。

夜の様子がどうかは……??

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