第2話 ワクワク

晴子



6月の土曜日、晴天。

今の気温は10℃。バイクには肌寒いが昼間には18℃まで上がる予定だ。バイクでキャンプするのには良い季節だ。

 

持っていく物は、基本のキャンプ道具に加えて、焚き火道具や調理器具など。

カブ旅なので、コンパクトで軽いギアばかりを選んでいる。これでほとんどのものはシートバックに収納出来る。

リビングで全ての物をバッグに詰め込む。

タナックスのシートバック2。

最大75リットルの収納力を持つこのバッグはツーリングキャンプの強い味方だ。

「寒くなるかもしれないし…」念のためペンドルトンのタオルブランケットを隙間にねじ込んだ。

トータル10数kgありそうなバッグを担ぎ、玄関先にあるカブの荷台にそっと載せる。センタースタンドで立っているカブは荷物の重さで前輪が浮く。

荷台の下部に固定用の紐を引っ掛けバッグに固定する。

紐をピンピンに張る。

荷物を揺らしても緩まないのを確認する。

ツーリングバッグの上にテントとシートを置きバッグの蓋でしっかり挟み込む。

次はサイドバックだ。

右のサイドバックにはガソリンの予備、パンク修理道具、小さい工具セットが入っている。

 使った事はないけど。

そこには携帯の充電器や蚊取り線香を。左のサイドバックにはカッパと必要な食材と保冷剤を入れた小さなソフトクーラーを入れる。

これで準備完了。

スマホのメモ帳に書いた持っていく物リストを確認する。

「ま、大丈夫そうかな。」

 一応積荷が崩れないか確認する為、家の近所を一周してくる。

早朝の爽やかな空気に、カブの軽やかな排気音が響く。

少し肌寒いけど、ヘルメットの中は妙に落ち着く。

戻ると玄関先に父が出てきていた。

「お、もう行くの?」

「そうだね。そろそろ出ようかな」時計は大体朝7時だ。

 

今までの経験からして、良い場所を確保できるのは正午近くになる確率が高い。

前日に宿泊しているキャンパーが帰った所を狙いつつ朝のチェックイン渋滞を避けられる。

今から出発して、約4時間。

11時位に到着するだろう。

お昼を食べてからチェックインするのも良いかもしれない。

「どこら辺を狙ってるの?」

「一応ライブカメラ周辺。お昼くらいになれば空いてるかなーと。」

 ふもとっぱれキャンプ場は全てフリーサイトで車やバイクを乗り入れて空いている好きな所でキャンプする事が出来る。

更に一箇所だけライブカメラが設置されていて、youtubeでリアルタイムで見る事が出来る。

私も一応女子高生だし、初のソロキャンプだ。

ライブカメラに映る範囲なら犯罪や怖い思いをする事は少ないだろう。

そもそもふもとっぱれはスタッフが夜中もいるので、多少安心感がある。

「そうだな。カメラ周辺は良い場所だ。トイレも売店も近いし。あ、コレやるよ」

と言って小さなイヤフォンケースのようなものを渡してきた。

「百均の耳栓。まあ必要だと思ったら使いな。」

「?あ、ありがとう。知ってると思うけど私少々うるさくても眠れるのに。」

「まあ、一応な。」

 まぁ、良いか。

「んじゃ行ってくるね。」

「気をつけて。楽しんで」

なんとなく父のニヤニヤした表情が気になったが、私は一人ふもとっぱれ目指し走り出す。

 

今となってはあやふやになっていたけど、中学生の時の私の夢が叶う。

このお気に入りのカブにのってソロキャンプにいく事ができる。

「オラワクワクすっぞ!」

 心の中で呟いた。

 

 


 


 


 

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