episode11 ギルド依頼は効率よく!!

 冒険者ギルドの朝。

今日も元気に(?)異世界に生きるレイは、依頼掲示板の前にいた。


「うーん、今日は何があるかな~!」


 その横には、腕を組んで静かに見守るセナの姿。


「まずは依頼を見る前に、報酬の価値をしっかり理解しておきなさい」


「はい先生~」

「先生って...まぁいいけど。」


 セナは指を立てて説明を始めた。


「銅貨50枚で銀貨1枚。銀貨50枚で金貨1枚。つまり金貨1枚は銅貨2,500枚分ね」

「ふむふむ……って、2,500!? え、それって日本円にすると──」


 レイは懐から銀貨を取り出して『鑑定』スキルを起動。


「……やっぱり! 銀貨1枚、約1,000円……ってことは、銅貨1枚で20円!金貨1枚だと──5万円!? やっばぁ……!」


突如テンションを上げるレイに、セナは困惑気味に首をかしげた。


「なにその"えん"単位……。よく分からないけど、頭の中で勝手に計算しないで」

「あっ……うん、ごめんごめん。」


 レイは話題を切り替えるように、掲示板の依頼に視線を移した。


「で、で、今の私におすすめの依頼は……?」

「そうね。薬草採取や荷物の配達なら確実よ。あなたはまだG級だし」


しかし、レイは不満げに唇を尖らせた。


「えぇ~……地味だなあ。効率悪そう……。おっ、これなんかいいじゃん!」


 そう言って手を伸ばしたのは──


「……ゴブリン討伐依頼!? あなた、懲りてないの?」

「だってゴブリンだよ!? 雑魚じゃん!」

「バブルヒポポス相手に何もできなかったじゃない...。」

「あれよりはマシでしょ!いけるいける!」

「はぁ…忠告しておくけど、次は助けないからね?」


冷たく言い放つセナの声も、レイには届かない。


「はいはい、助けてくれなくてもいけるって! 行ってきまーす!」


 そのままレイは受付へ向かい、依頼書を突き出した。


「これ、受けます!」


受付嬢は依頼書を見て困り果てた顔をした。


「えっと…ゴブリン討伐は推奨Eランクですので...。」

「そこをなんとか!ギルドは自己責任ですよね!」


受付嬢は戸惑った様子を見せたが、レイの猛攻撃に根負けし、やがて頷いた。


「……わかりました。では、ゴブリン討伐の詳細をお伝えしますね……」


 その背中を見つめながら、セナはため息をついた。


(どうせ私に頼るくせに……。この依頼が終わったら、私は一度距離を置こう


そんな決意を胸に抱いたセナだったが…


このあと、予想を裏切るレイの“想定外すぎる行動力”に巻き込まれていくことになるとは、まだ知る由もなかった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 17:00 予定は変更される可能性があります

私の異世界スキルはまさかの『ガチャ』!? 蒼月ケン @sougetu1000

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ