episode2 零、スキルで金稼ぎする

 「推し…助けて推し…。」


突然異世界に飛ばされた零は道の中心で唖然としていた。


現代にあったゲームのデータは持っていけない。


それを実感してデータが消えたような喪失感に陥った。


「…まぁいっか!異世界転生できたし!早速『ガチャ』してみよう!」


…んなことはなかった。


さっきまでの喪失感が嘘のように消え去り、ノリノリでステータスを開いた。


「えぇっと、唱えればいいかな。『ガチャ』!」


 すると、ステータス画面が変化して画面へと変わった。


「すごぉ!! しかも色んな種類がある!」


武器ガチャから能力ガチャ、食べ物ガチャまで、様々なラインナップが揃っていた。


 「じゃあ早速…!」


零は能力ガチャをタップした。


しかし、ステータス画面いっぱいに【残高不足です】と表示されてしまった。


「えぇ~いくらかかるの…って50,000G!?」


零の所持金は5,000G。十分の一しか満たしていなかった。


「仕方ない…武器にするか…っては?…」


再びステータス画面に【残高不足です】と表示された。


武器ガチャの必要な金は10,000G。さっきよりマシだがやっぱり足りてない。


「はぁ〜……この世界、私に優しいかと思ったら、まさかの現実志向……」


膝に手をつき、がっくり肩を落とす零。


 だがすぐに、パッと顔を上げた。


「でも私は廃課金者……つまり、“ゼロからの金策”も得意ってことよ!」


そういって周りを見渡すと、足元の草、ちょっと大きい石。木箱などに目を付けた。


早速、足元の草を抜いて腕を伸ばして唱えた。


「『売却』!」

【草を売却します】

所持金ポケットマネー:+1G】


「あぁ~まぁ、そんなもんだよね。」


 次は少し大きめの石を手に取った。


「『売却』」【石を売却します】

所持金ポケットマネー:+2G】


「お、少し上がった。これで3Gか。」


現代なら草とか石持っていっても売れない。だからこういうのも売れるのは相当大きい。


さらにそこら辺に落ちていた釘を拾って『売却』してみた。

【釘を売却します】

所持金ポケットマネー:+5G】


「おぉ~!この調子なら一日で100G余裕で超えれる!」


調子が上がった零は近くで木の板を見つけた。


(加工されてあるし、まぁまぁ大きいし売れるでしょ!)『売却』!

【看板を売却します】

所持金ポケットマネー:+65G】


「すごーい!一気に稼いじゃった!この調子でもっともっと…」


「おい!!」


 突然後ろから怒り心頭の衛兵らしき男性が走ってくる。


「ここの看板どこにやった!!」

「え、えっとただの板かと思って売っちゃったなんて…」

「はぁ!?それは立派な犯罪だぞ!」

「やばい!! 異世界来て初のイベントが牢屋はいやだああああ!!」


体の方向を変えて無我夢中に走った。



 ――――なんとか逃げ切れた…。


うぅ…日々の運動してなかったせいで息切れで吐きそう…。


どうせ逃げるならあの人を売却…いや、論理的にダメか…。


でもあの看板のおかげでいい小遣い稼ぎにはなったなぁ。


 零はステータス画面を開いて所持金ポケットマネーを確認してみた。


「『ステータスオープン』!」


――【金雀涙 零(かなめなみだ れい)】――

職業(ジョブ):課金者

能力(スキル):『売却』『ガチャ』『鑑定』

所持金(ポケットマネー):5,073G(+73G)

――――――――――――――――――――


やっぱ道のり長いなぁ…。もっと大きく稼ぎたいな。


「もっと……もっと金が欲しいッ!!」


 ゼェゼェと息を切らしながらも、零は強く拳を握りしめた。


気のせいか現代にいた時より疲れやすい気がする…まぁ気のせいか。


「…そうだ!なら鑑定して高い物探そう!『鑑定』!」


ここで3つ目のスキル。『鑑定』を発動させ、周りを見渡した。


自分の視界から集中した物全てに情報が出始めた。


――――〈ただの雑草〉――――

・特に価値はない。ただの邪魔者。

・鑑定額:1G

―――――――――――――――

―――――〈煙草の吸い殻〉――――

・じじいが吸った後ポイ捨てしたやつ。

・吸った後の唾液が臭い。

・鑑定額:5G

―――――――――――――――――

――――〈鳥のフン〉――――

・どこかの鳥がしたものだろう。

・肥料になるが誰も使わない。

・鑑定額:3G

―――――――――――――――


…ごみばっか反応するなぁ。


まぁ回収するけど。塵も積もれば山となるっていうし。『売却』。


【諸々売却します】

所持金ポケットマネー:+8G】


んーじゃあ人も鑑定してみるか。


試しに髭を生やした不潔な男、推定40代くらいの人に『鑑定』をかけてみた。


――――〈リオルド(31)〉――――――

職業(ジョブ):盗賊

スキル(スキル):『窃盗』

――――――――――――――――――


ふぇぇ…思ったより若いし、盗賊って職業ジョブに反映されるんだ…。


しかもスキルが『窃盗』って盗賊にピッタリ…。


とりあえず関わらないとこー…


 さっきの盗賊に背を向けて、歩こうとした瞬間とあることを思いついた。


(…そうだ!いっそのことあの人『売却』してしまおう!窃盗する人は害悪だし、私の金稼ぎになって一石二鳥~♪)


早速さっきの盗賊に手を掲げて唱えた。『売却』!


【リオルドを売却します。】

【売却に失敗しました。】


…あれ?何かミスったかな?もう一回!『売却』『売却』!


【リオルドを売却します。】

【売却に失敗しました。】


【リオルドを売却します。】

【売却に失敗しました。】


なんでぇ~!…やっぱ人を売るのは出来ないかなぁ…。


仕方ない…再び高い物探しに行くか…


 肩を落としながら町を歩き始めた瞬間、突然めまいがした。


(あれ…急にめまいが…うっ。)


そのまま零は倒れてしまい、体が動かなくなった。


(どうして…もしかして…っ!『ステータスオープン』)


――【金雀涙 零(かなめなみだ れい)】――

職業(ジョブ):課金者

能力(スキル):『売却』『ガチャ』『鑑定』

所持金(ポケットマネー):5,081G(+8G)

"状態(シチュエーション):魔力不足"

"MP(マジックポイント):0/30"

――――――――――――――――――――


予想通り魔力を使い果たしてしまっていた。


現代より疲れやすく感じたのは魔力不足の予兆だったのか…。


(いや…なんで今更表示されてる…の?)


ステータス…全部見せろよと思いながら、零の意識は深く沈んでいった…。

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