14(18)才の春です

 この家にカレンダーはなんてものはない。季節と稀にくる役人の巡回日から逆算して日付を割り出している。


 今日は俺の誕生日だ。ループ後直ぐに来るこの誕生日を利用しない手はない。


「母さん。今年の誕生日プレゼントは何?」


「あ、ケイちゃん!今年の誕生日プレゼントはねぇ…欲しそうに見てたこれ!」


 1度目のループの時は正確な日付を知りたかったのでカレンダー。2度目の時は受験の為の勉強の為の本。3度目の時は魔術を使いたかったのでこの村にある雑貨店にある一番古い魔法の本。そして4度目の今回は…


「古代語辞典!なにに使うかは知らないけれど、勉強熱心なのは良いことね!」


「ありがとう母さん」


 そう古代語…この村には古代語を読める人間がいなかった。つまり、この本さえあれば雑貨店の一番古い本を読むことが出来るというわけだ。前回?無駄な時間を過ごしましたよ。


 魔法の本は誕生日プレゼントで買ったのではないのか?その金は自分で出せるのか?そんな疑問が湧くかも知れないが、実は王都に行く馬車に乗る前にも本の注文が出来る。母さん曰く暇にならないように…らしい。




「…って訳で、今日から数日間は遊べない。悪いなトランプ」


「いや、学校に行くためなんだろ?じゃあ勉強も必要だよな?なら大丈夫だ。ケイは悪くないよ」


 今日、皆で遊ぶはずだった玉蹴り用のボールを持ちながら、眩しい笑顔でトランプはそう言ってくる。


「そう言ってくれると助かる。ま、勉強に飽きたら遊びに行くよ。…じゃあな」


「おう!待ってるよ」


 本当に人当たりの良い奴だな…大丈夫かな?あいつ。誰かに詐欺られたりしないか?まあ、トランプに危害を加えようとすればフランが黙っていないと思うが…。


 1週間後


「…これで大体はメモし終わったかな。後でアルに渡そうか」


「ん?なにそれ」


 俺以外居ないはずの部屋から声が!?


「…アルお前さあ、なんで俺の部屋に居んの?」


「暇だったから来た。迷惑とかじゃないでしょ?」


 足音はどこに置いてきたよ。


「まあ良いわ。…ほいこれ。俺がこの1週間で頑張った古代語の翻訳メモ」


「なにに使うの?それ」


 あ、そうか。アルどころか誰にも言ってなかったな。


「あの雑貨店の一番古い本を読むために使うんだよ。あれは魔道書のはずだから、俺のような魔力を持っている奴からすると喉から手が出るほど読みたいんだ」


「売り物でしょあれって。それに結構な値段がしてたと思うけど…勝手に読むこと出来るの?」


「大丈夫だ。王都に行く前に親が本を一つ買ってくれるはずだからな」


「良いねそれ。私も本、買って貰おうかな」


 アルの両親って優しいからな。ねだればなんでも買ってくれるんじゃねえの?


「そんなことないけどね」


「……え?」


「あれ?さっきなんか言ってたっけ…」


 無意識かよ。怖いな~…。


「取り敢えず今日はこのメモ渡しとくから帰って寝とけ」


「う、うん。そうする…」


 アルの身になにがあったかは知らんが、今日は休ませておこう。それにしても、心を読まれるのは冷や汗が凄いな。

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