また来週

のま

また来週

「パパ、ヤンキースの試合忘れんなよ」


 小さな拳が俺の手のひらに叩きこまれた。彼女と同じ砂色の髪、俺に似た目元。忘れないように目に焼きつける。


「ああ、また来週な」


 きっとこの子は俺を恨むだろう。たとえ母親の望みで、今日が最後の面会になったとしても。

 恨んでもいい。覚えていて欲しい。お前のパパは俺だけだと。


「ごめん、パパ。もう行かないと。ジムと家でアメフトの試合見る約束してんだ」


 10歳の息子は一丁前に俺を気遣うように見た。背後の彼らの家で、元妻とジムが息子の帰りを待っている。門限は午後9時だ。


「いいじゃないか。5分だけ、パパにくれ」 


 息子を抱きしめると、腕の中で身をよじった。


「やめろよ、パパ。気持ち悪い。らしくないぜ」

「そうだな。また来週」


 息子はドアの前で一度だけ振り返ると右手を軽く上げ、家の中へ消えていった。

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また来週 のま @50NoBaNaShi60

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