交差する想い
ボクには、瑠衣くんにまだ話せていないことがある。
実は、ボクと瑠衣くんは過去に一度会ったことがある。
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瑠衣くんが高校二年生、ボクは大学2年生、ボクが自殺する数週間前の話。
一人でボクの大学のオープンキャンパスに来ていた瑠衣くんはキャンパス内で迷子になっていた。
「君、大丈夫??」
「え……あぁ……う……」
「高校生?」
「は、はい……」
「何学部見に来たの?」
「文学部です……」
「文学部なら……着いておいで」
瑠衣くんは少し緊張を孕んだ足取りでボクの数歩後を着いてきた。
「君一人で来たの?」
「え?あ、はい……」
「なら、ボクが後でキャンパス内を案内してあげるよ」
「え?」
「お昼休みになったら、ここの噴水まで来て」
「分かりました……」
普段のボクなら面倒事に頭を突っ込もうとはしない。なのにどうして瑠衣くんにあんなにも優しくしたのかはボク自身にも分からない。もしかしたら、この子はボクが助けなきゃ、という使命感のようなものが働いたのだろうか。
お昼休み、噴水の前で待っていると小走りで瑠衣くんはやって来た。
「お待たせしてすみません」
「いいんだ。さ、まずは食堂に行こうか」
噴水のある広場の傍にあるA館の中央にはとても大きな食堂がある。
「何食べたい?」
「えと……おすすめとかって……」
「うーんそうだな。ボクのおすすめは無難に唐揚げ定食とかかな」
「ならそれにします」
自分の財布を出して支払おうとする瑠衣くんを止め、二人分の代金を支払い食券を受け取る。
「お金返します」
「いいよいいよ。ボク歳上だし」
「で、でも……」
「いいの。こういう時は素直に奢られなよ」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
定食を受け取り席に着く。
時間の許す限り、ボク達はそこでいろいろな話をした。ボクが質問をして、瑠衣くんがそれにこたえる。
──────
たかが数十分の話だが、思い出しただけで涙が込み上げてくる。本当は今すぐ瑠衣くんがいるあのアパートに帰りたい。しかしそれはできない。彼は、ボクと居たって幸せにはならないのだから……。
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1週間ぶりの更新です。
これにて『ツンデレウルフの幽霊さん』第1章が終わります。
明日からは第2章。シオンさんと瑠衣はこの先どうなるのか お楽しみに!
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