もう、どうでもいい……

 シオンさんは、まるで自分自身に言い聞かせるかのようにゆっくりと語った。


────────────────

 ボクの本当の名前は村谷紫苑むらたにしおん

 ボクが死んだのは二年前の夏だった。

 正確にいうと、ボクが自殺したのは二年前の夏だった。


 当時ボクは大学二年生だった。すごく楽しい大学生活を送っていた。軽音サークルに入り、ベースを弾いていた。友達にも恵まれ、勉強が苦手なボクをみんなが支えてくれた。しかも彼氏もいたんだ。


 サークルで出会った人で、ギターボーカルだった彼のかっこよさに惹かれてボクから告白したんだ。すぐにOKしてくれてボクらは無事付き合ったんだ。


 でもね、今思えばボクとは遊びだったんだろうね。


 付き合って一年記念日だったあの日、ボクは彼の家に泊まっていたんだ。夕食は彼が予約してくれたディナーを食べて、少し酔っていたボクらは彼の家で肌を重ねたんだ。ボクらは身体の相性が最高だったんだ。


 何度か肌を重ねたあとだった。ボクはベッドのうえで横になっていて、彼は冷蔵庫から水を取ってボクのもとへ帰ってきたとき、彼は言ったんだ。


「なぁ、俺ら別れよ?」

「え?」


 冗談だと思ったよ。彼はよく冗談を言って場を和ませる人だったから。


「な、なにを言ってるの??」

「別れて欲しい」

「じょ、冗談だよね?」


 彼は首を横に振った。それから彼は続けたんだ。


「かわりに、セフレになってくれない?」

「は?」

「俺ら身体の相性はいいじゃん??」


 心から彼に絶望してたよ。ボクは本気で彼を愛していたのに、彼からするとボクはただ欲を満たすためだけの存在だったんだ。笑えるよね。


「あと、俺彼女いるんだよね」

「は?」


 ここからボクの頭は真っ白になっていた。何を話したかも、どうやって帰ったのかも分からないが、気がついたらボクの部屋に帰っていたんだ。


 思いっきり泣いたよ、声をあげて。近所迷惑なんて考えず。何時間経っただろうね。涙は枯れて声も出なかった。そして、すべてがどうでもよくなったんだ。彼に捨てられることですべてがどうでもよくなるくらい彼に依存していた。


「あぁ……夜風気持ちいいな」


 ベランダに出て空を見上げていた。


「もう……いいや……」


 ボクはベランダの手すりに手をかけて、十階の自室から飛び降りた……。



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 1週間毎日更新6日目です!


 1章完結までのこり2話です


 明日更新終わると、一旦もとの更新頻度に戻します


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