オーバーキルです……

 "グハッ"


 痛い……ものすごく痛い……まるで錆びたナイフで心臓を刺されているような痛みだ。

 僕の痛みを知る由もない幽霊さん、もといシオンさんは


「つまらな〜い〜つまらな〜い〜」


 なんて歌ってさらにナイフを深く刺し込んでくる。


「てかさ、君の小説も面白くないよ?」


 "グハッ グハッ"


 出血多量で死ぬかもしれない。もうオーバーキルだ。


「君の小説はさ、なんか、こう、なんていうんだろね。すごくつまらない。心が動かないんだよ」

「ど、どこがダメなんですか……?」


 か細い声で尋ねると、シオンさんは少し考え込んだあと、口を開いた。


「君は、経験したことないでしょ?」

「え?」

「例えば……ここ」


 書きっぱなしで机の上に置いてある僕の小説を指さす。


「『空にある星々が、清らかに輝きを放ち……』って書いてるところ。ここ都会って設定だよね?それも、東京。割と有名だと思うんだけど、そんなに綺麗に星は見えないよ?」


 知らなかった。僕の生まれ育った田舎は夜空を見上げると、眩しいほどの星の光が照らしていたのに。


「こういう、なんというか現実離れ?したところの積み重ねで面白くないなって感じるんだよね。ストーリーは悪くないのに」


 僕はシオンさんのアドバイスをメモに取る。


「ファンタジーものなら多少の違和感は『ファンタジーだから』って割り切れるけど、君のはファンタジーじゃないでしょ?」

「確かに……」


 確かに僕は今まで、経験したこともないことを、よく調べもせず、想像で書いていた。これはすぐに書き直さないと。でも、経験してないから書き直しようがなくないか?


 考え込んでいると、いつの間にか僕の隣にやってきた。


「ねぇ」

「ん?」

「ボクと一緒に、デートに行かない?」

「え?なんで??」



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