曰付小学校「怪奇倶楽部」  

Honey

第1話 「旧資料室」

 …僕は今、とある学校のとある教室の前で立ち尽くしていた。目線の先にあるのは古びた木製の表札に「旧資料室」の文字、そしてその下には同じく木製の古びたドアがある。


「旧資料室」の表札は所々に虫食いが見られ、3つの穴は顔のようにも見えた。前にテレビで見たがこういうのを「シミュラクラ現象」と言うらしい。


 それから僕が、しばらく”虫食い表札”とにらめっこをしていると--

 ドアの内側から静かな物音がした。


 僕はハッと驚き、ここに来た目的をふと思い出した-- 

 

 僕の父親は、いわゆる転勤族だった。小さい頃からよく引っ越しをしていてその影響もあってか、通う先々の学校でクラスメイトと、深い友情を築く事が出来ず「友達」というものを作れた経験がない  


 その事もあり、僕は消極的になり、外で遊ぶより、家で父親のお下がりのパソコンを弄る日々が増えていった。

 そんな僕を見かねた父親は、僕が少しでも他人と触れあう機会を作るためか、会社を辞めて独立し、新しく越してきたこの街で小規模ではあるが、ラーメン店を開業した。


 それから2ヶ月後-- 新居から歩いて数分の所にあったこの”曰付小学校“への入学が決まった。


そしてそれからさらに1ヶ月後--

 担任「え~今日から新しく6年3組に仲間が加わることになりました!さっ!丘流くんみんなに自己紹介して!」 


 先生は僕に挨拶を促す--


「僕の名前は丘流 十弥(おかるとうや)、皆これからよろしく」

(何回やっても自己紹介というのは緊張するものだ...)


 自己紹介の後、皆の軽い拍手に混じり、ワクワクしているような顔でこちらを見ている女の子

 小馬鹿にしたようにニヤつく男の子

 あまり興味がなく、無関心な女の子

たった数秒でクラスの“空気”のような物が感じ取れた。


予め聞いていた事だが、この学校は町の過疎化の影響もあり、先生・生徒合わせて50名程しか居ないらしい。

そう言うこともありこのクラスには担任、自分含めて7人しか居ない。

まあ人の多い空間が苦手な自分には丁度良いとも思える気がする。


先生の案内によって自分の席が割り当てられる。一番後ろの席みたいだ...  

しかも左隅ってことは...ラッキ-だ!ここなら先生にバレずに居眠りできる...!!


...と思ったが、よくよく考えればそれは「全ての席」に人が座っている事が前提条件だ... 

こんなにすっからかんの教室じゃ目の前の人の背中に隠れて眠る、なんて芸当は出来そうにない

僕はショックで肩を落とし、席に着いた


すると--


先程の「小馬鹿ニヤつき少年」が相変わらずこちらに目を付けニヤついている。


その子は僕の2つ前の席に座っていた。

そして目があった瞬間にノートのページをビリッと破った。そこに何か書いた。

そして近くにいた子にノートの切れ端を渡し


「無関心の子」「ワクワクしていた子」...と

リレーのように手渡され、最終的には僕の所に回ってきた。そしてワクワクしていた子が僕に切れ端を渡す際に


「亮くんってこういう下らない事するの好きなんだよね...笑」

と呆れたように言ってきた。


僕はそれに苦笑いで返し、切れ端を見てみた。

雑に折り畳まれ、表には


「中を見ろ」


とだけ書かれていた。不思議に思いながら中身を確認すると

ミミズが這ったような字でこう書かれていた


   「今日の放課後旧資料室で待ってる」


  

  ...亮くんはもうこちらを見ていなかった


      第2話に続く--










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