第3話
ー魔界・機械技術部ー
「というわけでこの部署の管理をすることになった…アルベールだ…よろしく頼む」
「側近のルイスです♪以後お見知り置きを。」
「……ああ。ここの部長のジョセフだ。」
「エドアルド。」
「僕はディジス!」
「他にも人はいるが…今いるのはこの3人だな。なんせ人数が少ないものでな…で?何故ここがお前の管理下になったんだ?ええ?」
「いや…これは私がやりすぎたというか…元々機械化を押し進めない上に対してフラストレーションが溜まっていたというか…」
「フラストレーション?お前がか?人間時代、機械のある時代に生きてないお前が?」
「それはそうだが!悪魔になってから機械は見てきた!大体古来からの大悪魔は機械を軽視しすぎなのだ!魔法でなんとかなる?それが通用するのは魔力を馬鹿みたいに持ってる奴等だけだ!…機械が広まれば魔力が少ない者、持たない者もある程度力を持つやもしれん!そうしたらあの機械音痴共を制し、私がトップに…」
「欲に溢れてるな」
「悪魔らしいと言えば、らしいですね。」
「あいや、他にも利点はあるだろ…?交通の便が良くなったり、本来、この手紙もメール?とやらで良いんだろう」
「え?メール知らないの?どうやって命令を下まで通してるのさ軍は」
「魔法による通話」
「は??」
「嘘だろ…俺等が技術提供しているにも関わらず、そんなところがまだなのか?」
「信じられなーい」
技術部の面々は驚きを隠せないようだ
「だろ???だから工業を推し進めようと元帥殿に直談判したのだ。そしてここに来たということだ。」
「そ、そうか…」
「え!?あの人に会ったの!?あんな化け物に!?」
「化け物と言うな。相手は元帥だぞ。お前は化け物と言うが元帥殿は元人間ではない純粋な悪魔だからな。わざわざ体を人の形にする必要性がないのだろう。」
「そう言われてもな〜」
アルバートがここに来た理由よりも先の衝撃が抜けない二人は生返事で返したが、ディジスだけはバルティオと話したというアルバートが気になっているようだ。
「でもよくそんな得体の知れないものと話せるよね…」
「上級悪魔のほとんどはそんなものだろう?そいつらと話すことが出来なければ上に立つ事など夢のまた夢だ。」
「そっか…」
「お前はまだ新入りだったか。慣れないよな。大丈夫だぞ〜その内慣れるからな。」
「なんだか慣れたくないような気がするよ部長…」
「それが悪魔になるということだろうな。」
「…話を元に戻すが、アルバート公はここに来て何をするつもりだ…?」
エドアルドが話を元に戻したおかげで周りも本題を思い出したようで視線をアルバートに移した
「そんなの、機械化を推進しに来た。魔界に産業革命を起こすのだ!」
「だから何を」「まずは人員確保!そして新人教育だ!余った人員で通常の仕事、そして軍に既存の技術を広めに行く!」
自信満々気に言った。
「「「はぁ!?」」」
「とりあえず、人員は当てがある!ポスターを刷るぞ!!」
「「ちょっと待て!!」」
「はいな!」
「待てディジス!」
ポスターを刷りに行くディジスを止めようとする二人をアルバートが止める
「ああ!頼む!……二人共、今は私が上司であることを忘れるなよ?」
「こいつ…!」
「勝手にやりやがって!」
「フフッ、悪魔はそういうものだろう?」
笑いながらアルバートは言った。
ー魔界某所・スラム街ー
「本当にこんなところに貼るの〜?」
「そうらしいな…閣下は奇抜な考えをお持ちなようで。」
二人は若干引いたような顔をしている。
〜数刻前〜
「結局そのポスターを何処に貼るんだ?」
「軍が貼ろうともしない所だよ。きっと応募がたくさん来るぞ?」
「御託はいいんだ。さっさと答えてくれないか?」
ジョゼフのその態度を見てアルバートが少し不機嫌そうに言う。
「…お前、先程も言ったが私は上司だぞ?言葉遣いを気にしろ?今は温情で許してやっているんだぞ?」
「はいはい、仰せのままに。」
「……で、場所のことだったな。場所は都近くのスラム街だ。「案山子」を狙うぞ。機械作りに魔力はいらないだろう?」
「スラム街!?言っている、いやおっしゃる通りではありますが…生活環境が生活環境です。服装等清潔感での問題があります。」
「確かにそうだが、それは、まあ私がなんとかする。此方側はただの求人だが、彼奴等にとってはあの生活から抜け出せる千載一遇のチャンス!貪欲に技術を学んでくれるだろう!とんでもない才能を持った者がいるやもしれないな!」
「はぁ、、、」
「それに面接はちゃんとするぞ?事業拡大には人手が重要、機械なんてそこら辺の悪魔が興味を持つと思うか?こんな小さな部署に。」
「……」
「あそこは何処も手をつけてない、所謂ブルーオーシャンというやつだ!ここでは案山子という名前は似合わんかもな!」
その言葉を聞いたジョゼフは黙り、俯いてしまった。
「部長!何か言ってください!部長」
「エド…私は何も言い返せない…そうだな…小さな部署だからな…」
エドアルドはアルバートを睨んだ。
「おい、私は上司だぞ?お前達の小さな部署を拡大し、地位を高めてやろうとしているんだ。感謝されないとな?」
「コイツ…!頼んでもないのに」
エドアルドが小さな声で呟いた
「もう一度言おうか?」
「……分かった。」
「素直に話を聞いてくれて何より。言葉遣いも今回は目を瞑ろう。何せいきなり押しかけて来たのはこちらだからな。」
「ポスター出来たよ!……何があったのこれ…」
ポスターを刷り終わったディジスが戻ると部屋には机に突っ伏しているジョゼフ、不貞腐れているエドアルド、上機嫌のアルバートがいた。
「ああ、ありがとう。これは気にしないでくれ!ポスターを貼る場所を話していただけだ。」
「そう…」
「ポスターは此処とここ、そしてこことここあとは此処だな。その5箇所に貼っておいてくれ。今週中にな。」
アルバートは取り出した地図を指差しながら言った。
「…分かりました。部下にやらせておきます…」
「頼んだぞ。」
そう言ってアルバートは消えていった。
「嵐のような人でしたね…」
「ああ、そうだな。この件は…とりあえずこの二人に連絡を取っておくか。」
「スラム街に行くなんて、可哀想な人…」
「何言ってるんだ?片方はお前だぞ?」
「ええ!?」
「お前はまだ新人だからな、たくさん経験を積んだ方がいいぞ。」
「うくぐ、、はーい。」
嫌そうな顔をしながらディジスが去ったいった。
そして今に至る。
「あーもー!こんな場所なんて来たくなかったー!」
「ハイハイ、仕事終わらせるぞー。」
そうして二人の悪魔はスラム街と、スラム街一歩手前の村の広場にポスターを貼って回った。
Snowdrop saga ゆきさくら @kyoukasuigetu0112
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