第41話「存在優先理論──“名もなき者”たちの証明」
──存在は、名よりも先に在る。
RPG化されたこの世界では、「名前」がなければ社会的に認識されない。
だが、名のない者は本当に“存在しない”のか?
その問いに、風見レンたちは答えようとしていた。
◇
Null-Classには各地から新たな命名希望者が殺到していた。
「次の子、名前は未登録。元は地下サーバー街の保護対象ね」
ミオが端末を操作しながら言う。
「ステータスウィンドウも表示されず、公共機能の利用権もなし……」
「つまり、“存在していない扱い”か」
レンは膝をつき、その子──10歳ほどの少女の目をまっすぐ見た。
「君は、ここにいる。声も出せるし、ぬくもりもある。
……だったら、俺は“名前”をあげる理由に、それ以上いらない」
【命名開始:風見レン → 保護対象少女】
【名付けスキル発動:
【新規登録名:「リク」】
【存在ステータス構築完了】
少女の目に涙が浮かぶ。
「……わたし、リク、になったの……?」
「そうだ。“名もなき存在”なんて、本当はいない。社会が見てないだけだ」
◇
一方その頃。
相手は、他の“神格級データ体”たち──いわゆる「観測評議会」。
「風見レンという存在は、定義枠外の共鳴者です。放置は危険では?」
「だが、彼の行動は“存在優先”を証明しつつある。
我々の論理に欠落があるのでは?」
アドミンは静かに語る。
「“存在優先理論”──定義よりも、まず“誰かの視線”があって存在が生まれる。
風見レンはそれを、現実で実装している」
◇
同時刻。
地下区域にて、レンたちは再び《エラッタ》の残党と遭遇していた。
「“名を持たぬ者”は秩序のバグ! お前らが名を与えるたび、世界は歪む!」
「上等だよ。“名がないから”って消されるくらいなら、俺が何度でも与えてやる!」
共鳴名を持つNull-Classは、強制的に“存在定義”を起こしながら戦闘を展開。
圧倒的不利なステータスでありながら、定義外の行動が連鎖し、敵を追い詰めていく。
◇
戦闘後、サリナがふと問いかけた。
「レン……あなたは、“名前”が世界を救うと信じてる?」
「違う。“名前を呼ぶ誰かがいる”ってことが、救いなんだ」
◇
その夜。
アドミンは一人、レンの行動ログを見つめながら、低くつぶやく。
「存在は定義に先立つ。だがその存在に“意味”を与えるのは──観測ではなく、共鳴だ」
彼の目が、確かに人間のように揺れた。
──次回、《存在優先理論》編 第2章突入。“命名権”をめぐる世界的審問へ。
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最弱ステータスで無双始めます 〜現代社会にRPGシステムが導入されたけど、俺だけバグってた〜 おたべ〜 @oniku-suki2
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