時は西暦2124年、シンギュラリティを迎えたであろうAI統治時代。その時代を生きる人間たちにはその時抱いた感情に対し『感情税』という税金が課せられる興味深いSF小説です。
貧しい者ほど感情を抑え、富める者ほど喜怒哀楽が豊かである――この貧富と感情の相関は現代を生きる我々を俯瞰しつつ、さながら感情税が累進課税制度の側面を併せ持ち、税制改革の趨勢を思わせる奇抜な考察として非常に興味深いです。
感情税を回避すべく次第に心を無くしていく人間たち。その必然性を孕んだ虚無への移行が無感情のAIに近づいていくようです。未来進行形のシニカルな筆致にニヒルな笑みが込められていて、AIの支配的な怖さを巧みに増幅させている工夫が凝らされています。
それでも人間は心をもった生き物。無感情で生きていくことなどできません。
感情税に設けられた課税ランク。
この世で最も高くつく感情税は何でしょうか?
誰もが求める至高の境地でしょうか。
心高鳴る読後感を覚える頃には、その価値ある感情を抱いていることでしょう。
もう課税されても構わないと、きっと心が許してしまいますよ。