Velvet Bloom

Rie

―《一夜の花》 ―

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ベルベットの闇に 包まれて

吐息は 星屑みたいに ちらついていた


忍ぶように這いのぼる指先が

内なる奥底を そっと震わせ

じんわりと 熱が広がってゆく


口元よりも さらに深く

秘めたる核を 一つひとつ 溶かされて

とめどなく 蜜を滲ませる


ウブなふりなんて もうしない

あなたの舌が ふれるたびに


   ――その香りは、狂おしく

   ――月下美人

   一夜だけの花として 淫らにひらく


焦がれた 芯を暴かれ

私の上に 汗が滴る

あなたを 吸収していく


そして 溶けあう輪郭

とけて、まざって、なくなって――


心ごと ひとつになれたなら

もう 帰れない場所でも いいと思った


何度裂かれても

また 咲いてしまう


ちぎれても 蘇る――

まるで ヒトデのように


疼きは 静かに再生を繰り返す


やめて――

そう呟く 唇の裏で

本当は 飢えている


愛でも 執着でも かまわない


今夜だけは

この身体ごと


濡れたベルベットの海に 溶けて

しずくのように きらめいて

息の根さえも 奪われたい


あなたの熱で

芯の奥まで 塗り替えて


   ――最後まで

     沈めて



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Velvet Bloom Rie @riyeandtea

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