第4話
自宅。静寂。財布は慣れたサラサラという音を立てて開いた。
ドミトリーの狂ったような叫び声は、静寂を破っただけではない──彼の現実そのものを引き裂いた。罵詈雑言と嗚咽が入り混じり、安っぽい貸し部屋──彼の新たな「住まい」の壁にぶつかった。彼はポケットを裏返し、財布の裏地を引き裂き、床を這い回り、隙間という隙間を覗き込み、USBメモリとメモ書きがただの悪意ある影の戯れだと願った。何もない。埃だけ。そしてたった一時間前には勝者の心臓が鼓動していた胸の奥に広がる、絶対的で冷たい虚無感だけが残っていた。
警察。若い刑事は、湿ったアスファルト色の疲れた目で、彼の話をチェーンソーに燃料を補給するように──整然と、感情を挟まずに聞いていた。「ビットコイン2つ…二千万…クロワッサン…腹痛…地下鉄…」メモを取り、頷き、剃刀の刃のように鋭い質問を投げかけた:
**「カフェの後もカードホルダーにUSBはあったと?」(ドミトリーは誓った──地下鉄では見た、触った!)
「パスワードは紙切れに書いてある。USBの隣に?」(刑事の声は、まるでドミトリーがベビーカーにダイナマイトを仕込んでいたと認めたかのような響きだった)。
「カフェで怪しい者は? 地下鉄のホームで──混雑、押し合いは?」(記憶に浮かんだのは、ぼやけた顔、個性のない群衆、車両の轟音、そして腸の痙攣だけだった)。
「検査受けられますか? 毒物の?」(さりげなく投げかけられたが、重く、毒を含んだ含みを帯びて空中に漂った質問)。
捜査。それは固まったコンクリートの速度で進んだ。地下鉄への照会。カフェや駅周辺の防犯カメラの映像。何も証明しない、ぼやけたシルエット。「犯罪的なものは一切確認できず」 それは判決のように響いた。刑事はめったに電話してこなかった。声は平板だった。「やってますよ、ドミトリー。でも物的証拠はない。目撃者もいない。USBは…まあ、お分かりでしょう、見つけるのは…」彼は言葉を濁した。続ける必要はなかった。ドミトリーは理解していた。爪の先ほどの大きさのUSB。その値段は人生そのもの。誰かがそれをゴミと勘違いし、一番近いゴミ箱に捨てたのかもしれない。あるいは…あるいは誰かが知っていたのか? シティで彼を観察し、神経質な様子、頻繁に内ポケットを確認する仕草を見ていた誰かが? 誰かが呪われたクロワッサンに何かを仕込み、彼を弱らせ、気を散らそうとしたのか? それとも単なるスリ、影のように巧妙なスリが、痛みにうずくまり、歯を食いしばり、ベッドのことしか考えられなかった地下鉄車内で仕事をしたのか?
結末。それはすぐには来なかった。最初は──無感覚。次に──自分自身、世界、あのカフェのレジ係、地下鉄の入口に滑りやすいタイルを敷いた建設業者へと向けられた怒りの津波。そして──闇。マンション売却は解放ではなく追放へと変じた。二千万は「連邦」タワーのガラスに結ぶ結露のように蒸発した。彼は安アパートを転々とし、食べていくため、その惨めな部屋代を払うためならどんな仕事でも引き受けた。遠くに見えるモスクワ・シティは、勝利の象徴ではなく、幻肢痛(ファントムペイン)となった。鋭い塔の針が空を刺すように痛み、かつて彼がどれほど高く舞い上がり、どれほど深く墜ちたかを思い出させた。彼はその一帯を避けた。焼きたてのパンの匂いが吐き気を催させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます