町の掃除屋

ゆったり虚無

あなたの町にもきっといる

 この町には、掃除屋と呼ばれる者らがいる。

彼らは漆黒の闇と共に町に現れ、夜に紛れて処理をする。

なんの処理か?

当然、死体である。

ジョンは掃除屋の一人である。


「今夜も酷いものだ。」


誰に聞かせるともなく独り言ちる。

ジョンはもうすでに三体も処分していた。


「どいつもこいつも、バラバラになってやがった。」


バラバラの死体はよく見るが、慣れるものではない。

だが、これも仕事だ。

そう割り切り、死体の解体に取り掛かるのだ。

だが、最近はバラバラ死体だけではない。


「またか…。」


ジョンが横の路地に目をやると、死んで間もない死体があった。

だが、体はバラバラではない。

恐らく毒だ。

近寄るべきではない。


「すまん。他の掃除屋が対応する。」


そう言い、去ろうとした。

が、「赤子か?」


死体が動いたと思ったら、近くに赤子がいたのだ。

しかし、毒にやられているのか、かなり弱っている。

ジョンは掃除屋としては一流である。

だが、死にかけの者を助ける術など知らなかった。


「許せ。」


そう言い、ジョンは走り去った。

ジョンはすでにお腹一杯だったのだ。

彼はゴキブリと呼ばれる種族。

町の掃除屋だ。

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