11: 高まり

・現状ゴリ押し突破は不可能

・再挑戦は何度でも可能

・但しログアウトをした場合任務失敗判定

・俺は一連の試行の中で第三段階のレベル10に到達


…さて、どうするか。


ステータスが上がっても変化はほとんど実感できない。定数強化では剣に辿り着くほどのステータスを得るまでにレベルがカンストしそうだ。


予想はできる。このクエストは本来こんなところで発生させるべきものではないのだ。恐らくこれはラスボス前の最後のクエスト的存在であり、グリッチ紛いの俺のようなムーブをしない限り興味すら抱かれずフラグがたつはずのない代物…突破法もそれくらいの難易度と見て良いだろう。


悩む時鳥を、魔王は依然笑みを浮かべながら見ている。


さて、時鳥の予想は的を得ている。このクエストは本来最終段階に到達した者に課せられるもので、辛くも第三段階に到達したばかりの人間に簡単に超えられるものではない。一種のお仕置きクエストであり、『クリアは想定されていない』。


実際、運営はすこぶる安心していた。まさかこの化け物でもこのクエストを超えはしないだろう。早期には頭脳明晰な者しか到達不可能で、脳筋でなければ突破できないこのクエストならば。運営テストプレイクリア率0.1%の数字が物語っている。



『常人』にはクリア不可能。



この言葉に燃え上がってしまう時鳥を相手としなければ、この予測は満点であった。



すこぶる単純な理論を、時鳥は呟く。


「定数が無理なら倍率でやればいいのか?」



魔力が放出される。


ずっと気になっていたのだ。わざわざ魔王を出現させて、俺を監視させるような流れに。何か気づかなければならないことがあると気づけば一瞬であった。


奴は魔力を常に纏っている。こういうゲームのお約束、強化魔法の類であろう。幸いなことにこの予測が外れていたとしても俺ならばイメージできれば創造できる。



「『創造魔導・憑依』」



〈創造した魔導は既に存在しています〉

〈『初級魔力強化』習得〉


体が軽くなる。


〈『中級魔力強化』習得〉


足が動く。


〈『上級魔力強化』習得〉


剣に触れる。


〈『超級魔力強化』習得〉


「まさか剣に触れるとは…!?」


魔王がクエスト完了を伝えようとするも、時鳥は止まらない。



〈『極級魔力強化』習得〉



ミシリ、と大地が裂ける。

時鳥が確と掴んだ剣は、その圧倒的な力量を前に屈する。



「…上手くいったか。」



隠し条件達成。

触れるに飽き足らず、手にしようと試み成功させた者のみが振るうことを許される、WBO内最強の剣足りうる代物。


〈『真魔之剣』獲得〉

〈命名権を手にしました。命名してください。〉

〈全任務を完全攻略しました。〉



この日、全プレイヤーの全ランキングにおける順位は、ある一人の男に追い抜かされることとなった。

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暗殺魔王の蹂躙道中 feat.はるのひ はるのひ @ume_ni_uguisu

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