2012年7月⬛︎日に放送された某心霊番組

※タイトル名及びタレント名は伏せさせていただく。


(怖いBGMと共に、司会者がタイトルを告げる)


司会者K:「〈タイトル名〉〜」

さあ、今年もこの季節がやってまいりました。〈タイトル名〉、司会のKです! いやぁ、いつもながら怖がりなのに、この番組の司会を始めて早三年。毎回来てほしくないと思うばかりですよ! ねぇ、Yちゃん!


アナウンサーY:そうですねぇ! またこの番組が始まるって聞いて、もう、叫びましたよ!


司会者K:嘘はダメ!


(会場にわずかな笑いが起こる)


司会者K:本日、この番組にお付き合いくださるゲストはこの方々です!


(会場から拍手が起こる)


司会者K:いやぁ、本当にどうして出演するのか、よくわからないくらい頭がおかしい人たちですね!


(数名のタレントが司会者にわざとらしく怒鳴りつけ、会場に笑いが起こる)


アナウンサーY:ゲストの皆さんのご紹介は、最初のVTRの後で詳しく。そして、皆さんの身近で起こった怖かった出来事を話していただきましょう。それでは、最初のVTRです。


(番組に届いたいくつかの心霊映像が流れる)


(映像がスタジオに戻る)


スタジオは静まり返っており、皆、引きつった顔をしているか、顔を手で覆っている。


司会者K:いや〜、怖かったね。特に最後のが本当に! どうだった、Yちゃん?


アナウンサーY:本当に毎回言ってますけど、信じられません!!


司会者K:そうだよなー。じゃあ、少し気分を落ち着けて、ゲストの紹介と、皆さんの身近で起こった怖い出来事をお聞かせください。


(ゲストタレントが右から順番に挨拶と怖い出来事を話す)


そして、


アナウンサーY:ではお次は、今ドラマ・バラエティ等でも引っ張りだこ。なんと今年の八月には映画の主演も控えております! タレント兼女優のMさんです!


タレント女優M:よろしくお願いします!


司会者K:今、引っ張りだこですね、Mさん! こんなところに出ちゃったら、もっと幽霊に人気が出ちゃうかもよ!


M:もうやめてくださいよ!! 私も怖いの苦手なんですから、絶対今日トイレとか行けなくなっちゃう。


司会者K:じゃあ、俺がついてって、なんて……。


アナウンサーY:はいはい。ではMさんの身の回りで起こった怖い出来事、お話しください。


(スタジオの照明が一段と暗くなり、Mさんにだけ明るいライトが当たる)


M:これは、皆さんに内緒で持ってきたものなんですけど、私、心霊写真を持ってるんですよ。


(会場にざわめきがおこる)


どこからか「話が違うだろ」「こんなの聞いてないよ」という声が聞こえる。


彼女はカメラに向けて、ポケットから取り出したであろう写真を掲げた。


(カメラがその写真をズームする)


写真は夜に撮影されたもので、木々が複数写っており、おそらく雑木林の一角だろう。だが、不可思議な点は特に見当たらない。


司会者、アナウンサー、他のゲストタレントたちが顔をしかめ、写真を見つめている。


司会者K:ごめんね、Mさん。これのどこが心霊写真なのかな?


M:私、ここで死ぬんです。


(会場に大きなざわめきが起こる)


ところどころ、「え?」「は?」「なんて?」といった声が聞こえる。


司会者K:なんて言ったの? 今?


M:だから、私ここで死ぬんです。


タレントC:Mさん、何を……。


M:プロデューサー、お父さん、Sくん、見てますか? まだ何人かいるけど、私、ここで死にますから!


Mさんは目を大きく見開きながら、カメラに向かって同じことを繰り返す。


M:私はここで死ぬますから!


(カメラがMさんをズームする)


カメラの画角の外から、誰かの「カメラ止めろ!」「中止!中止!」「どうしたんですか!」といった叫び声が聞こえ、


放送はそこで終了した。


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