エピローグ 最後の秘密

数年後。


世界中の人々が、それぞれの名前で生きる時代。

歴史の資料には、「かつて“性”という概念があった」とだけ残っていた。


その片隅に、Aの部屋があった。


書棚の奥、古びたHDD。

「FTNR_CORE.BAK」と書かれたフォルダを、Aは静かに開く。


中には、かつてのミオの記録。

数千の並行世界の“ふたなりミオ”たちの記憶と、未来の可能性。


Aはそれを見つめ、ふと呟く。


「“性”っていうのは、消えるものじゃない。

ただ、“自分で意味を決められるようになる”ってだけなんだよね」


モニターに映る、無数の“ミオ”たち。


Aはそれをそっと閉じた。


「だから、やっぱり思うよ」


窓の外、夜空を見上げて──Aは、笑った。


「──ふたなりって、やっぱり、かっこいいじゃん」

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