第二章 ふたなり革命前夜

その日を境に、ミオの生活は奇妙な方向へと進み始めた。


Aは異常に手際が良かった。

次の日にはすでに「ふたなり啓蒙動画(#1)」がYouTubeに上がり、TikTokでは「ふたなりってかっこいいチャレンジ」がトレンド入りしていた。

内容はただ、いろんな人が「ふたなりってかっこいいじゃん」と言うだけの謎動画。だが、これがウケた。


“ふたなり”という言葉にネガティブな意味しか見出していなかったミオにとって、

このムーブメントは“現実バグ”に等しかった。


「ねえA、なんであんなに早く動画編集できたの?」

「AI。あと、未来の自分から素材もらった」

「タイムリープもの!?」

「正確には“ふたなり量子跳躍”。まあ、後で説明する」


「後で説明する」が口癖のAに引きずられ、ミオは渋々、街頭演説に立たされることになった。

“ふたなりであることは罪じゃない!”

“むしろ、可能性だ!”

“この時代のバグこそ、次の時代のスタンダード!”


気づけば、ミオの姿を真似た“自称ふたなりアイドル”や“ふたなり支援NFT”などが続出し、

とにかく“ふたなり”という言葉が一人歩きしていった。


そして、変化は“肉体”にも現れ始めた。

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