ふたなり差別

@sabure9993

プロローグ

この国では、「ふたなり」が忌避されていた。


“二つある”というだけで、蔑視される。

笑いのネタにされ、性の玩具にされ、存在そのものが「エロ」としてラベリングされる。


――そんな世界で、生まれ落ちた私は“ふたなり”だった。


名前はミオ。

ただの女子高生。

だけど、それ以上に、「ふたなり」であることが、私のアイデンティティを支配していた。


学校では噂が広がった。「あいつ、あれがあるんだって」

初恋の人には「無理、ごめん」とだけ言われた。

誰かと手を繋ごうとするたび、私の体は先に囁かれていた。

“見てみたいよね、ふたなりのやつって”――と。


“百合えっちは、ふたなりじゃない方がいい”

そんな匿名の呟きが、何よりも胸に刺さった。


だけど、あの日。

たった一人、私に向かってこう言った人がいた。


「だって、ふたなりって、かっこいいじゃん」


その言葉が、私の人生を変えていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る