引き伸ばしすぎ?な出会い
中身を流したションペットを流しで洗い、水道水を詰めて冷蔵庫に入れ、私は落ち着きを取り戻した。
そんなわけで、
改めて推しを召喚することにした ──『トジルぷりんす!人生ゼンカイギアーズ!』の【浅田晋太郎】のデータをインストール
とはいえ、ただゲームのスクショをアップロードしただけじゃダメで、 「何度も接触して記憶に焼き付けたデータ」が必要らしい。 プレイ時間・感情履歴・脳波・心拍数のピークログなどを参照し、 キャラクターを「自分の記憶から再構築」しているらしい。
私はそっと、ヴァニティネルを目にかけた。
暗転する視界。数秒後、パチッという接続音。 そして現れる、
まるで焼きそばを頭に乗せたようなカールとボリュームで、整髪料の香りがほのかに漂う。メガネは細いシルバーフレームだが、レンズに微妙な指紋がついていて、彼の「完璧になりきれない」チャームを醸し出している。20代前半に見える顔は、目尻が少し下がった親しみやすい笑顔で、キラキラした瞳が特徴だ。服装は、カジュアルなのにどこか気取ってる。チェックのシャツにチノパン、足元はスニーカーだが、なぜか靴紐が蛍光イエローで主張が激しい。シャツの袖は無造作にまくり上げられ、指パッチンをするときにチラッと見える腕時計は、100均っぽいのに彼が着けると妙にオシャレに見える
浅田晋太郎(CV浅沼晋太郎)が現れた。彼を引き当てるためだけに75回ゲームをアンインストールした。
私は、気づけば座り込んでいた。
……つまり、“推し”と何百時間も一緒にいたオタク”だけが、現実で再会できる権利を得るということ。
あの時も彼を引き当てたその日から、私の人生は始まった。
いやあ、そういうの──ちゃんと地獄でやってください。 何もかもが、狂っていた。でもその時、初めて「生きていてもいいかもしれない」と思った。
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