琥珀色の現実
床に広げられた銀と黒のガジェットたちは、この部屋の中で唯一、未来のものに見えた。
──さて、使い方はというと。
《ヴァニティネル》は、目元を覆うサングラス型のインターフェース。 《エコー&チェンバー》は、耳元にかける高感度イヤーデバイス。 それぞれをBluetoothでリンクさせた後、専用アプリを起動する。
アプリ名は── 「Lifeinvader」 (略してライイベ。開発元は、マーク・ザッカーバーグとスティーブ・ジョブスを混ぜたような男が経営するアメリカ企業)
簡単に言えばこれは、 「自分の脳内にある『理想像』を、現実空間に視覚投影する」ための拡張現実(AR)ガジェットだ。
……は? 何を言ってるのかわからない? 私も最初そう思った。けど、実際こう説明されていた。
【Lifeinvaderとは?】 本製品は、装着者の強く結びついた記憶情報(メモリーストレージ)と、任意の画像・音声データを元に、視覚的・聴覚的な対象をリアル空間に重ねて表示する装置です。投影対象は装着者の「願望」や「没入体験の記録」を元に生成され、現実の風景の中に違和感なく溶け込むキャラクター投影が可能です。
【例:ゲームキャラ・アニメ・Vライバー・元恋人・理想の上司 等】
※弊社自慢のドッキングシステムにより、二次元のデータ取集はお任せください
ようするに、「お前が勝手に脳内で作った理想像を、現実空間にぶちまけてやるぜ!!」という悪趣味ガジェットである。
そして、私は迷わずこの装置に
と鼻息を荒くしたところで、違和感が心を掻きむしる
視界の端に入ったのは栄養ドリンクが満載された二リットルペットボトルだった
中身は、見るからにビタミンたっぷりな妙に濃い琥珀色。
……あ。
私のションペットだった
昨夜、トイレに行くのが面倒で、咄嗟に使った空きボトル。
この家にはもうお母さんはいない、靴屋の妖精もいない
昨夜トイレ代わりにしたションペットが会社に行ってる間に消滅などしないのであった。
小便入りのペットボトルがある部屋に推しを迎え入れられますか?
→いいえ
いいえ
いいえ
仕方がないので片付けることにした。
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