轟さんの悩み事的なアレ ④

 とどろきのオッサンの話をまとめるとこうだ。


 1、第四ダンジョンの『羅刹』こと山川やまかわ いわおって人が先頭に立って、ダンジョン内でやりたい放題やっているって噂が飛び交っている。

 2、探索者協会としてはマスコミやメディアに取り上げられる前になんとかしたいそうだ。

 3、探索者協会にも表には出せない粛清部隊なるものがあるらしいのだが、役不足らしく、動かすのに躊躇している。

 4、目の前のオッサンは日本ランキング一位なので、オッサンに役が回ってきた。

 5、オッサンとしては『羅刹』は知らない仲じゃないし、なんとかしたいと思っている。

 6、ついでにオッサンを負かした自分を紹介したいので付いてきて欲しい。


 最後のいらなくね?




「わかりました。とどろきさんには日頃からお世話になりっぱなしなので、断固としてお断りさせてもらいますね」


「おぉう、すまねぇな!……っておぉぉぉい!!!断るのかよっ!今のオマエの話の流れだと普通は引き受けてくれるんじゃねーの?」


「えぇ?めんどいじゃん?」


「いやぁ、頼むよ!一緒に行こうぜ?」


「自分には行くメリットがこれっぽっちも見当たらないんですが?」


「メリットならあるぜ!」


 オッサンが妙に胸を張って妙な事を語り出した。


「最近、オメェは第3で注目を浴びているだろ?そこで少しの間だけ身を隠すんだ。すると、今回の事も長く続くわけじゃねぇ。熱が冷めたくらいに戻ってくるんだよ」


「いや、そんな連泊前提で言われても、自分は16歳の未成年なんですが?」


「うっ!オマエを見てると未成年って事を忘れちまうぜ……」




「じゃーしょうがねぇ!金でどうだ?」


「結局金かよっ!オッサン!」


「もうそれしか思いつかねーんだよー!」


 駄々を捏ねるオッサンを眺めながら今世ではこんな大人にならないでおこうと心に決めた。



 後日



 結局、とどろきさんに付いていかなかった自分はいつものペースでダンジョンへ潜り、いつものように18時に終わって家に帰り、にのまえさん家でご飯を食べて二一にかと喋って、遊ぶ毎日に戻った。


 たまにダンジョンセンターで他の探索者に話しかけられたり、絡まれたりするが、まぁまぁ、ほぼほぼ、平穏な日々を過ごしていると言ってもいいだろう。


 受付のお姉さんの自己アピールがちょっと強く感じる事もあるが、気のせいであってほしい。


 休日の二一にか美海美みみみとのパーティーも順調。

 このまま平和な日々が続いて欲しいなと思ったのがいけなかったのだろうか?



 とある日にこんなニュースが飛び込んできた。



【鉄壁、羅刹に破れる!】



 あっそう。


 これが最初に聞いた自分の感想だ。

 自分には関係ない。そう思っていたんだが、そうじゃなかったみたいだ。




 第三ダンジョンセンターに羅刹が現れ、『一二三ひふみってのはどいつだ!』と自分をご指名らしい。

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