轟さんの悩み事的なアレ ②

「えっと、自分が一二三ひふみですけれど、なんでしょうか?」


「俺と勝負しろっ!」


「なんで?」


「え?」


「ん?」


 なんか、自分がなぜ勝負なんてしなくちゃいけないのかを聞いたら、目の前の探索者は返答に困ってしまったみたいだ。困ってしまってワンワンワワンかな?


 そのまま探索者さんの横をスっと抜けて自分はダンジョンセンターから出ていった。



「てな事が今日あったよ」


「アレじゃない?一二三ひふみがこの前、とどろきさんを泣かした事を言ってるんじゃない?」


「泣かしてねーし!てか、とどろきのオッサン、鉄壁て名前なの?」


「なんで一二三ひふみが知らないの?第三ダンジョンの有名人よ?日本ランキング一位の人よ?」


「嘘だーっ!?あのオッサンが?」


「みたいだよ?ほら、探索者協会のホームページの情報にも乗ってる」


「あ、本当だ。二一にかから物を教わるなんて、自分はもう終わりかもしれん」


「カッチーンっ!!一二三ひふみ!そこに直りなさい!説教してあげるわ!」




 そうか、とどろきのオッサンは本当にランキング一位だったんだ……

 そんなオッサンを軽くあしらってしまったのは悪かったかな?

 もう少し苦戦した体を装ってあげた方が良かったかな?



 ま、いっか。あの時はオッサンにムカついたし。


 それよりも、オッサンを負かしたことが何処から漏れたんだろうか?

 そっちの方も気にした方がいいかな?


 あー、自分はただダンジョンへ潜って平穏に探索したいだけなのに……

 人生とはままならないものだとか言ってみる。



 その翌日。


「あれが、一二三ひふみってやつだろ?」

「山田の挑戦を速攻で断ったらしいぞ?」

「なんで?山田なんてガラが悪いだけのへなちょこだろ?」

「あの一二三ひふみってのがもっとチキンだったって事だろ?」

「まぁ、見るからに子供だしな」



 うざい。

 非常にうざい。


 ダンジョンセンターに入るなり勝手に耳に入ってくる雑音、また雑音。

 無視したいのだが、『一二三ひふみ』なんてワードが飛び出せばついつい反応してしまう。みんなもあるだろ?どれだけ騒がしい場所にいても『おっぱい』ってワードについつい反応してしまうことが。


 直接自分にどうこうって事はないのだが、気分が悪いし、気が重くなってくる。

 こういう事を避けるために普段から目立たないようにしてきたのに、全てはあのオッサンのせいだ。そうだ。そう考えないと自分の精神が持たない。


 そして、自分がこうやってイライラしてたり、オッサンを探そうとするとオッサンは姿を見せない。野生の勘でも持ってんのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る