ベテラン探索者 轟さん的なアレ④

 場所を移して二階層。


「二階層は野犬とスライムですね。

スライムは一層と変わりませんが、

野犬は素早い動きで近寄って攻撃してきます。

野犬の攻撃方法は主に噛み付きが多いです。

野犬は基本的に二階層では単独なのですが、タイミング次第では複数とエンカウントする場合があるので、速やかに倒す事が大事になってきます。


では、先ほどと同じようにダンジョンの空気を感じて、野犬の気配を探ります」


「野犬の気配とか」


 先ほどと同じように魔力ソナーを広げて、索敵魔法を使う。


とどろきさん、ダンジョンの空気ってなんですか?」

「わからん」

とどろきさん、野犬の気配ってなんですか?」

「わからん」

「役に立たねーな、このオッサン」

「オッサンって言うなよー」




「はい。いました。これが野犬ですね。

野犬の場合はまず走って近付いて来てからの飛びかかりなので、その軌道上にナイフを構えて、こう」


 飛びかかってきた野犬にカウンターでナイフを合わせて振り抜く。


「で、野犬を倒したら先ほどと同じように魔石が落ちるので拾います」


 魔石を拾って腰のポーチに入れて、彼らをみる。

 やはり、彼らはポカンとこっちを見ている。


「いや、簡単そうにやってるけど、とどろきさんクラスならともかく、俺らのような新人じゃ野犬の動きを追うので精一杯だぜ。

俺らの基本戦術は、俺らが剣と盾で野犬の動きを抑えて、後ろの女子が矢を打ったり、槍でチクチク攻撃するんだ」


「それじゃ、一回の戦闘で時間がかかりすぎるでしょ?」

「いや、一撃で終わらせているオマエが異常なんだよ!

オマエ、本当に俺らと同じ新人か?年齢誤魔化してないか?」


「えー?失礼なっ!とどろきさん、なんとか言ってくださいよ!」


「すまん、俺もアイツらと同意見だ。

一二三ひふみ、オマエはもっと自分の事を客観的に見た方がいい。

今日、オマエが簡単そうにやっている事は俺でも出来ねーし、オマエ以外に出来そうな奴が思い当たらねー」


「ガーン!う、嘘だ?自分はできるだけ目立たないようにひっそりと余生を楽しみたいだけなのに……」


 どうやら今日、自分なりに行動を抑えているつもりだったが、それでも周りから見れば異常な行動の数々だったらしい。これは気を付けるべきか?しかし、これ以上自分のペースを落としてチマチマやるのは自分自身が楽しくない。




 その後、実際に彼らに野犬を相手取ってもらい、アドバイスできるところはアドバイスして、今日のところは終了となった。


 次の講習があるのかないのかは分からないが、彼らには是非とも今日の事を活かして安全にダンジョン探索を続けて欲しいものだ。






ちなみに、とどろきさんが連れて行ってくれた綺麗なお姉さんのいる店はメイドカフェだった。

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