魔法少女 美海美ちゃん的なアレ②

 〜side 美海美みみみ


 先週は何だか怒涛の週だった。

 二一にかちゃんがイジメから救ってくれたって思ったら、探索者資格を習得する事になって、その週末にダンジョンへ入る事になって、二一にかちゃんの師匠兼幼馴染兼PT《パーティー》メンバーの一二三ひふみさんを紹介されて、あれよあれよという間にダンジョンだ。


 私はもともと内向的な性格なので本とかネット小説を読んだりするのだが、そのファンタジーな世界の魔法が現実にある事を知らされて、実際に自分がその魔法の素質があるなんて、先々週の私からは想像もできなかった事だろう。


 しかも、その魔法自体、多分世界中の誰も知らないという。

 そんな凄く重要なことを私なんかに気軽に教えても良かったのかな?


「え?だってこれからずっと一緒にいるなら美海美みみみも覚えておいて損はないんじゃない?」とは二一にかちゃんの言葉で、

「手札は多い方がいいに決まってるよ。それにいくら学校でも本当に四六時中二一にかと一緒にいるわけじゃないだろうし、美海美みみみが一人の時にまたイジメをしていた奴等がちょっかいをかけてくるかもしれないだろ?」とは一二三ひふみさんの言葉だ。


 冷静に考えてその可能性はあると思う。

 理不尽な理由で私をイジメの標的にしたあの子達が二一にかちゃんが釘を刺したくらいで諦めるとは到底思えない。

 先週でも直接な攻撃はしてこないものの、すれ違う時とかに「乳だけデカいトロ子が調子に乗んな」とか「一人の時は気を付けろよ」なんて言葉は結構投げられている。

 先週は二一にかちゃんが常に私の隣にいてくれたからそれが防波堤になってくれたんだと思う。

 でも、これはやっぱり私が二一にかちゃんの力じゃなく、私自身が立ち向かわなければいけない問題だと思うし、週末の二日間で立ち向かうための勇気と自信とその為の力を貰ったと思う。


 週明けの月曜日。

 私は一人、教室のドアを潜り、自分の席に着く。

 二一にかちゃんはまだ来ていない。他のクラスメイトはパラパラと登校している。

 私をイジメていた主犯の子も席について取り巻きの子達とこっちを見ながらニヤニヤしている。

 少し前の私ならその視線だけで気分が重くなり、身がすくんでいただろう。

 でも、何だろう?今なら全然怖くない。ダンジョンのスライムの方が私には怖かったように思う。

 ダンジョン最弱のモンスター、スライム。

 弱いんだけど、それに油断をした初心者探索者が実際に命を落としたりしている。

 私も一度だけ危ない目に遭った。すぐに一二三ひふみさんが助けてくれたけど。


 そんなスライムと比べると、あの子達は私をイジメたり、精神的にプレッシャーを与えてくるけど殺しに来たりはしない。そう考えるだけで身体と心がふっと軽くなった気がする。


 二一にかちゃんがくる前に終わらせよう。

 私はそう思い立つと自分の席を離れ、主犯格の子がいる席へと向かう。

 まさか私一人で来るとは思わなかったのか、ニヤニヤしていた取り巻きの子達も面食らった顔をしながら私と主犯の子の顔を見ている。


「え、えっと、わ、悪いんだけど、金輪際、わ、私に構わないで、も、貰えませんか?」


 どもり癖は治らないけど、私は精一杯要求を伝えた。

 主犯の子の眼を見ながら。

 両手で彼女の机の両端を持っ、、、あら?片方が折れてるわ?あ、二一にかちゃんが折った時のやつか。


 一瞬、面食らったものの私の言葉を理解した途端に両目に怒りの色を宿し始める頃に「ボキッ!」と彼女の机から衝撃と破壊音が響く。


「あ、ご、ごめんなさい、す、少し力を入れたら、つ、机が折れちゃった。あ、あとで直しておいてね」


 2度目のあり得ない事に主犯の子の目は怒りから恐怖の色へ変え、無言でコクコクとうなづく置物になってしまった。

 取り巻きの子達も私が机を折った時に一歩下がるどころか二歩下がって私と主犯の子のやり取りを眺めていた。


 私なりに言いたいことは言ったので、その場を離れ自分の席へと戻る。

 そうだ。私はやったんだ。やってやったんだ。

 今まであまり好きになれなかった自分が今日、この瞬間、好きになれた気がした。

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