二一 ちゃん探索者デビュー的なアレ⑤

 〜side 二一にか


「あ、ありがとう。にのまえさんだよね?」


 助けたクラスメイトがお礼を言ってくれた。

 それだけで、私の心があったかくなる。


「同じクラスの大和やまとさんだよね?こんな事よくあるの?」


 大和やまとさんは俯いて言いづらそうにしながらも、


「わ、私、トロいから、他の子達からす、少し……」


 そ、そうだったのかぁ……全っ然気が付かなかった。

 あまりにも鈍感すぎる私の鈍感力に落ち込みそうになる。


大和やまとさん、迷惑じゃなかったら私と友達になろう!」


「え?でも、にのまえさんもターゲットにされちゃうよ?」


「私は大丈夫だよ。むしろドンと来い!って感じ?」


 私の言葉に驚きつつも私の心配をしてくれる彼女に、なんてことはないよ!と軽く言い放つ私。

 何にせよ、宣言して友達になったのはこれが初めてだなと関係ないことを考えていた。



 次の日から私の上履きが隠されたり、教科書に落書きされたりと私もイジメのターゲットにされたらしい。

 てか、昨日、窓からしっかりと顔を見ているからご本人に直接文句を言いに行く。


「ねぇ、私の上履きとか、教科書の落書き、あなたでしょ?」


「えぇ?知らないよ?なんか証拠でもあるのぉ?」


「ないよ」


「ないのに疑うんだぁ?」


 白々しく惚けてくるから、私は彼女の机の端を掴んで、こぅ、軽く、ボキっと。

 机の端を折ってやった。


「え?えぇ?!」


 普通の人は机の端を折ったり出来ないことは重々承知しているが、身体強化を使えばこれくらいの事軽く出来てしまう。


「私、しょうもない事に時間を取られたくないの。分かってくれるかな?」


 顔を近づけて次はオマエを折ってやろうかって意思を込めて彼女に伝える。


「わ、分かったわ……」


 少しアンモニアの臭いがしたけど、私はそのまま彼女から離れて大和やまとさんの席まで向かう。


「終わったよ」


「に、にのまえさんって凄いね」


「そう?私の幼馴染が探索者をやっててね、私も探索者資格取ったんだ、それで色々と教えてもらってるの」


「え?探索者ってそんなこともできるの?」


「多分出来ないと思う」


「え?」


「その幼馴染だけじゃないかな?」


「す、凄い人なの?」


「ん〜、どうだろ?凄いのかな?普段のアイツを見てるとあまり凄くは感じないなぁ」


 これは嘘だ。一二三ひふみが凄いのは私が知っている。私だけが知っていればいい。


「そうだ!大和やまとさんも探索者にならない?それで一緒にダンジョンへ入ってお小遣いを稼ごう!」


「え?えぇぇ?わ、私、トロいし、運動とか全然だめだよ?」


「大丈夫。私と一緒なら守ってあげられるし、無茶な所には行かないよ」


 この日、私の生涯において最も大事な親友が出来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る