二一 ちゃん探索者デビュー的なアレ③

 〜side ダンジョンセンター受付のお姉さん〜


 あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!失敗したっっっ!!

 まさか彼の大事な家族だったとはっ!!

 私のその場の感情でキツイ言い方をしてしまい、彼の機嫌を損ねてしまったっ!

 だって、私の大事な一二三ひふみきゅんに何処の馬の骨ともわからないような悪い虫が纏わりついて来たから牽制しようと短絡的な事をしてしまった。


 ダメよ真有まゆ。あなたはダンジョンセンターのナンバーワン(自称)受付嬢なのだからっ!


 もっとクールに、もっとエレガントに、一二三ひふみきゅんがオギャるくらいに少し(自称)歳上のお姉さんで接していくのよ。

 それで、成人になった一二三ひふみきゅんは憧れのお姉さんに告白して、小さな庭付きの家と小さなふわふわの子犬を飼って温かい家庭を作っていくのよっ!


 あー、結婚したい。




 〜side 二一にか


 土曜、日曜と一二三ひふみとダンジョンに入った。

 ダンジョンは少し怖い雰囲気がだったけど、一二三ひふみが居るから大丈夫って何故か安心できた。


 一二三ひふみは昔からそうだ。


 初めて一二三ひふみに合ったのは10歳の時で、自動車事故で両親を亡くし、彼だけが生き残ったって事をお父さんから聞かされて、隣の家に一人で住むって話も聞いて、私の家で晩御飯を食べるって時に顔を合わせた。


 なんだか、暗そうな奴だと思ったけど、両親を亡くした直後だってのに逆に明るく振る舞えるわけがない。

 その時の私はそこまで気が回らずに、少し苦手な男の子って印象だった。

 同じ学校に転入してきて、同じクラスになった。

 周りと馴染めずに少し浮いた感じに思えたが、いつの間にか自然と溶け込んでいた。

 自分から何かをするわけでもなかったが、自然と誰かを助けたり、アドバイスしたり、喧嘩が起これば仲裁に入り、いつの間にか仲良く遊んでた。


 不思議な男の子って感じ。


 中学に入っても一二三ひふみは変わらないように思えたけど、時々大人の人みたいな印象を受けたりした。

 なんていうか、他の男子は馬鹿で頭の悪い事をやってはしゃいでいるのに、一二三ひふみはそれを一歩引いた所から見てて、度が過ぎないように見守ってるって感じに思えた。

 そんな一二三ひふみもやっぱり男の子で家の本棚にはなろう系と呼ばれる小説やアニメのフィギュアを飾ってたりする。

 隠れ厨二病って奴なのかな?


 ある日、一二三ひふみが高校に行かずに探索者になるって言い出だした。

 お父さんは心配はするけど反対はしなかった。

 私はそれを良いなって思った。私も探索者になって一二三ひふみと一緒にダンジョンへ潜りたいと思った。


 なんだろう?一二三ひふみと離ればなれになる訳じゃないのに一二三ひふみと一緒に居れなくなる訳じゃないのに、なんだかそれは嫌だと思った。

 だから、私も探索者になって、土曜と日曜、学校の無い日は一二三ひふみと一緒にダンジョンへ潜りたいと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る