二一 ちゃん探索者デビュー的なアレ

二一 ちゃん探索者デビュー的なアレ①

 二一にかが探索者資格を習得した。……5回目で。

 4回も習得試験に落ちる奴は前代未聞らしい。

 作りたくもない記録を二一にかは作ってしまったってことだ。


「うぉぉぉ!誰かっ!私を殺してくれぇぇぇぇ!」


 なぜか二一にかは自分の自宅のベッドで悶絶しながら転がっている。

 自分の部屋でやれよ。パンツ見えてるぞ?ピンク。


「ま、まぁ、なんだかんだで受かったんだからよかったじゃん」


「何言ってるのっ!これから先、私がダンジョンセンターへ行く度に『おい、見ろよ、アイツが試験に4回も落ちた女神だぜ?』『ヒュー!可愛い顔してるのに4回も落ちたのかぁ?逆にスゲーな!』『さてと、試験に4回も落ちた美女の実力を拝見させてもらおうかな?』『なっ!なにぃ!試験に4回も落ちただとぉ!』『知っているのか?雷電』とか有る事無い事面白おかしく、私の可愛さだけが誇張されて一人歩きしていくのよっ!」


「おまえ、落ち込んでないだろ?」



 そんな二一にかの襲来があった次の土曜に自分と二一にかはいつもの第三ダンジョンへ。

 めっちゃ受付のお姉さんが見てくるが、視線をスルーしつつ受付を済ませて二一にかとダンジョンへ入る。


 まずは1層でスライムを相手に二一にかの動きを見る。


「どぅりゃぁぁぁぁっ!!」


「掛け声が勇ましいっ!」


 二一にかの剣がスライムを両断する。ちなみに剣は自分のを貸してやった。二一にかは高校生。小遣いは月に五千円なので、すぐに探索者装備は用意できない。

 なので、二一にかの服装は汚れても良い服、ジャージだ。

 ダンジョンを舐めているのか?と思われがちだが、超初心者達も似たような格好をしているので、他の探索者たちもジャージを着ている初心者探索者には優しく接してくれる。

 自分は自由に出来るお金が多い方なので、安物だが、革製の防具を着ている。


「いい感じの振り下ろしだけど、二一にか、オマエ、自主練的なことやってただろ?」


「うっ!やっぱり分かっちゃう?実は学校が終わってから放課後に剣道部の子に使わない竹刀を振らしてもらってた」


「なるほど。いいんじゃないか?咄嗟の時ほど日頃の積み重ねが助けてくれる訳だし」


 さて、二一にか二一にかなりに真面目にダンジョンと向き合おうとしているのかも知れない。その感情が一時的なものであっても、真摯に向き合うなら応援してやりたくなるな。


 少々不安な気もするが、二一にかとも長い付き合いだ。彼女が怪我をしたり、命を落としたりしないように生き残るためのすべを教えてやった方がいいのかもな。


 やらない後悔よりも、やった後の後悔ってやつか?知らんけど。

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