ポーション的なアレ⑪

「ねぇ、一二三ひふみ、今日何かあったの?」


 二一にかが聞いてくる。

 今はにのまえさん家で晩御飯を頂いた後のまったりタイムの最中だ。


 なんだろう?二一にかはたまに鋭い。普段は何も考えてなさそうな顔して本当に何も考えていないくせにほんの僅かな違和感を感じたりする。二一にかのくせに……


「あ、あぁ、ダンジョンでちょっとな」


 流石に今日人を殺しましたなんて今世では言えない事くらい自分でも分かっている。

 前世の記憶は確かに自分の中にあるが、今世での自分は九十九つくも 一二三ひふみとして生きて行くと決めているからだ。

 たまに前世の感覚のままに行動してしまうが、それはそれ、これはこれとして、魔法の知識だとか、魔力を使った身体強化だとか、調合の知識だとか、使えるものは使っちまおうの精神だ。

 今回の場合は家族を害するってところにキレてしまったが、未来の憂いを断つって意味では正解かもしれないし、やっちまったもんはしょうがない。アフターカーニバルってやつだ。


「ふーん、そっか。来月は私の誕生日だからね。忘れないでよ?」


「あぁ、誕生日プレゼントか?考えているよ」


「違うよっ!探索者資格が取れたら一緒にダンジョンへ行くって話!」


「あっ!……もちろん、覚えているよ」


「あっ!とか言ったのに?」


「あっ!そっちのことだったかの『あっ!』だよ」


「そういう事にしといてあげるよ。ね、お父さん、一二三ひふみが一緒ならいいでしょ?」


 そう言って自分達のやりとりを眺めていた二三ふみさんに二一にかが聞く。


「あぁ、構わないよ。一二三ひふみ君が一緒ならね。逆に一二三ひふみ君がダメと言ったらダンジョンは許可できないな」


「何?その一二三ひふみを全面的に支持しますって言葉?」


一二三ひふみ君の今日までの探索の実績を考えれば当然だよ。世間一般の大多数の探索者は1日潜ったら一日休みを入れて探索するんだ。なのに一二三ひふみ君は毎日余力を残しながら毎日潜っているんだよ。それに、駆け出しの探索者は大体一回の探索で頑張っても五千円前後の報酬だ。一二三ひふみ君は多い時で二万円、少ない時でも一万円は稼いで来るんだ。これを毎日、無理せず余力を残してだ。これがどんなに凄いか利口な二一にかなら分かるだろう?」


 二三ふみさんの長台詞に圧倒されながらも、偉い褒めようだと少しこそばい。

 二一にかを見ると彼女も圧倒されている。


「あらあら、お父さんたら一二三ひふみちゃんが困っているでしょう?」


 二三ふみさんの奥さん一華いちかさんが二三ふみさんを嗜めてくれる。


 普段の彼女はあまり喋らないが、何かあるとこうやって助け舟を出してくれたり、優しく嗜めたりしてくれる。

 そう、普段の彼女はあまり喋らない。だが、彼女は毎回、必ずここにいる。

 描写がなくても一華いちかさんは必ず居るのだ!


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