プロローグ的なアレ
プロローグ的なアレ①
自分が生まれ変わっている事に気が付いたのは割と早い段階だったと思う。
何やら暗い窮屈な場所を押し出されるように少しづつ移動して、その場所からの脱出と同時に来た開放感。そして何かのつながりが絶たれ、その後に来る衝撃に本能的な叫びを上げたのを今でもうっすらと覚えている。
それから1年が経ち、2年が経ち、3年が経ち、時間が経過していくとともに自分の状況がだんだん分かってくるし、前世の記憶との差異も分かってくる。
自分は前世では小さな村出身で、食い扶持を稼ぐために領都まで出て、冒険者ギルドに登録して冒険者になって、日銭を稼いでその日暮らしをするだけの底辺の冒険者だった。
とはいえ、幸いと言っていいか自分は少々器用貧乏なところがあったので、金に困るようなことはなかったが。
薬草を採取したり、知り合いに教えてもらった薬草の調合をしてポーションを作ってみたりしたり、別の知り合いに魔法を教えてもらったり、他のパーティーの手伝いをしたりと、群れることはなかったが、孤立することもなかった。
荒事は得意ではなかったが、それは知り合いの奴らと比べてのことだからな。
奴らは殆どが高ランク冒険者様だ。
そんな奴らと比べると自分なんて鼻くそほどだ。
精神安定のためには他人と自分を比べない事が大事だとギルドで酔っ払ってた奴が言っていた。
そんな前世と比べれば生まれ変わった今世は一言で言うと平和だ。
スイッチを押せば光る照明に、スイッチを押せば洗濯、乾燥までしてくれる洗濯機って箱があったり。
遠くの景色を映してくれるテレビとかいう板。
独り言かと思ったら遠くの人と話が出来るという小さめの薄い板。
今世では魔法はないが、魔法よりも不思議な科学という物が溢れている。
しかも、死というものとは無縁な生活。
気を抜きすぎかと思ったが、これが普通のことらしい。
現在の自分は先日5歳になった。
七五三とやらの写真を撮って、寺院までいく。
神への感謝を捧げるというのだが、この世界の神は一人ではなく、複数いるようだ。
前世の教会関係者が聞いたら助走をつけて殴りにくるだろうな。
幼稚園とやらに預けられ、同じ年代の子供と顔を合わせる。
人間の本能なのか、群れを作り、どちらが支配するかで小さな争いをしている少数と、のほほんとしている多数と、それを眺めている自分。
前世と合わせると、かなりの年齢になるのだが、童心に帰って作った泥団子は燃えた。自分でも満足のいく出来だった。
それをヤンチャなガキ大将に壊された時は今世で初めてキレた。我ながら大人気ないと思ったが、今の自分は子供だし、意識が身体に引っ張られているのだろうと、自分に言い訳している。
表面上は子供らしく振る舞い、第2の両親に心配をかけまいと立ち回りもしたが、逆に子供らしくないと言われたりしたが、前世ではなかった家族の温もりというのがここまで心を満たしてくれるのかと感動すらした。
危険もなく、魔法はないが科学というものが発展しているので便利な生活を送れ、温かい家族に愛情を受けて育つ。前世の殺伐とした世界から一気に平穏で心休まる今世に感謝を捧げる日々に終わりが告げられたのは自分が10歳の頃だった。
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