第三章:深海の日常と、見えない記憶の欠片 🐚
七番室の窓から見えるのは、
深い、深い青色の世界。
時折、正体不明の光の粒が、
まるで星屑のようにきらめいては消えていく。
これが深海。
私の新しい「日常」が始まる場所。
🛌
ベッドは、ふかふかの海藻でできていた。
横になると、ふわふわと体が浮くような感覚に包まれる。
壁には、珍しい貝殻やサンゴが飾られ、
まるで博物館のようだ。
でも、誰も住んでいないはずなのに、
どこか生活感があるような、奇妙な感覚。
🎵
翌日から、私の深海生活が始まった。
朝食は、イカ先生が作ってくれた、
七色に光るゼリーと、
甘くてとろけるような深海フルーツ。
「お嬢様、どうぞお召し上がりください。」
彼の言葉には、いつも優しさが滲んでいた。
🧜♀️
クリスは、いつもソファに座って、
分厚い古書を読んでいるか、
あるいは、窓の外の深海をただじっと眺めている。
私とはほとんど目を合わせようとしない。
まるで、私という存在が、
彼女の視界に映ってはいけないものかのように。
🗣️
「ねぇ、クリスさん。
なんで、そんなに私に冷たいの?」
ある日、私は思い切って尋ねた。
彼女の指が、ピクリと震えた。
本のページをめくる音が、やけに大きく響いた。
🧊
「…貴様のような、感情に塗れた存在は、
私の安寧を脅かす。」
彼女の言葉は、まるで氷のように冷たかった。
感情に塗れた存在。
それは、かつて私という人間が持っていたもの。
そして、彼女が「封印」したというもの。
🤔
その夜、私は七番室で一人、考えを巡らせた。
私はなぜ、感情に塗れているのだろう。
死んだはずなのに、この体には、
確かな温もりと、心のざわめきがある。
これは、本当に「私」なのだろうか?
それとも、どこかの誰かの魂が、
私の体に宿っているだけなのだろうか。
📜
ふと、部屋の片隅に、古びた巻物が置かれているのに気づいた。
埃を被り、ところどころ破れている。
広げてみると、そこには読めない文字が羅列されていた。
しかし、その巻物の端には、
どこか見覚えのある模様が描かれていた。
それは、私の目尻に浮かぶ、
金色の鱗のような模様と瓜二つだったのだ。
💫
私は息を飲んだ。
これは一体、何を意味するのだろう。
私の体に宿る謎の模様。
そして、この巻物。
まるで、見えない糸で結ばれているかのように、
私の中に、新たな疑問が渦巻いていく。
深海の底で眠っていた何かが、
ゆっくりと、目覚めようとしているのかもしれない。
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