怪異に関する様々な情報をまとめます。
一ノ瀬慧(いちのせけい)
幽霊が映っているビデオテープの真実
「あるYouTubeチャンネルの動画の話なんですけどね」
情報提供者の◼️◼️さん(匿名希望の為、名前は伏せる)は、所謂ホラー系のYouTubeを観るのが日課だそうだ。
「心霊スポットってあるじゃないですか。人が亡くなったとか事件があったりとか何かしらの理由で曰く付きになった場所です」
怖がりではあるものの、自分では絶対に行く事の出来ない心霊スポットに興味を持ち、沢山の心霊スポット探索系チャンネルを見ているが、いつものように動画を漁っていると "心霊" 検索の一覧ページに表示されているサムネイルに違和感を覚えた妙な動画があったという。
その動画はビデオテープを再生したものをデジタル化してアップロードされたものだと前置きをして◼️◼️さんは続ける。
「赤い部屋ってご存知ですか?結構有名なんですけど、ほんとうにあった呪いのビデオという作品に収録されている中でも怖いと評判のものです。最初はそれのパロディーかなと思ったのですが、真っ赤な部屋の中にテレビがポツンと置いてあるサムネイルだったんです。2011年にアナログ放送が終了して、それ以降は使われなくなったブラウン管と呼ばれているアナログ放送専用の箱型のテレビです」
◼️◼️さんは直感的にこれは見てはいけないものだと感じたが、それ以上に好奇心が勝ってしまい、動画を開いてしまった。
「内容としては、真っ赤な部屋にテレビが置いてあるだけでした。もっとわかりやすく説明すると、赤い電球で照らされた部屋の真ん中にテレビが置いてあって、三脚にビデオカメラを付けてずっと撮り続けてるだけの3分くらいの動画でした。でもね、理由はわからないけど何だが妙に怖いんですよ。何も変わらない映像で、サーッていうノイズがなければ静止画を見てるだけのようなつまらないものなのに見てはいけないと消したくなる怖さがあるんです」
◼️◼️さんは更に続けた。
「でも、その理由がわかったんです。この静止画のような映像にはずっと幽霊が映っていました。」
幽霊を見た事もないし懐疑的な私からすれば、それを幽霊だと断言する◼️◼️さんにも疑いの気持ちが芽生えたのだが
「動画を保存してスマホに入れてあるので是非その目で確かめてみてください。」
と、スマホを差し出された。
そこには確かに赤く照らされた殺風景な部屋にポツンとテレビが置かれている。
そして、画面の中央に再生マークが表示されている。
それでは見させていただきますという意味を込めた軽い会釈をして、画面中央をタップすると画面にはたまにノイズの線が上から下へ、下から上へと流れていく以外には変わった様子もなく、音や声なども特に聞こえない。
それなのに、聞いていた通り消したくなる怖さを感じるのだ。
もちろん理由はわからない。
ポツンと置かれているテレビに目線を集中させていると、動画が終わってしまった。
「どこに幽霊が映っているんだよって思いましたよね?置いてあるテレビのモニターに何か映るんじゃないかとか思いませんでしたか?でも、違うんですよ。もう1つ動画があるのでこれを見てください。」
◼️◼️さんはスマホを取り上げて、横にスワイプをしたあと、再び差し出した。
先程と変わらない画面に再生マークが表示されている。何も映っていなかった事も確認済みなので正直なところ見る気はおきなかった。
この映像を見たら取材は切り上げよう、と思っていると◼️◼️さんは口を開いた。
「この映像はさっき見てもらった映像を4倍速にした映像です。すぐに見終わるので見てください。」
何がしたいのかわからない上にとても焦ったい。
早く終わらせる為にその映像を再生すると奇妙なものが映っていた。
先程の映像で上から下へ、下から上へと流れていたノイズが4倍速の速さで移動しているのだが、そのノイズの中に髪の長い女性が映っているのだ。まるでパラパラ漫画のように、ゆっくりだとわかりづらいものが倍速になる事によって見えてくる。そして、この4倍速で動くノイズと部屋が重なる事によって髪の長い女性のシルエットが赤い部屋の中に佇んでいるように見えるのだ。
「幽霊って肉眼だと見えないんですよ。どの心霊系YouTuberの動画も怪奇現象といえば音や声ばかりで姿が映っている動画が全然ないんです。あったとしてもいわゆる演出って感じで明らかに人なんですよね。でも、この映像は気付く前から意味のわからない恐怖に駆られました。本物ってこういう事なんだと思います。」
霊感もなく、決定付けも難しいものの確かにそうかもしれないと頷ける動画だったので、◼️◼️さんにはその動画を送ってもらい、お礼の粗品を渡してその日の取材は終了した。
後日、スタッフに取材内容とその映像を見せると疑問に思った事を口にした。
「なんで◼️◼️さんは三脚にビデオカメラを付けて撮ってるってわかったんですかね。あと、サムネイルにも動画にも電球なんて映ってないのに何で赤い電球ってわかるんですか?蛍光灯とかかもしれないし。それに、ビデオテープを再生したものをデジタル化してアップロードされたものだなんて、それっぽく見えるだけで真相はわかりませんよね。」
確かに不審な点は多い。
YouTubeで"心霊"で検索すると赤い部屋のサムネイルが確かに表示された。
そして、それを投稿しているチャンネル名は
「◼️◼️」
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