第16話 瑠璃と潜入捜査③
さて、そんなこんなでやがて放課後になった。
瑠璃は早速その例の目の目撃者から色々と話を聞くことにした。
「それで・・・・・・まずはここの人から話を聞こうか」
「被服研究部かあ・・・・・・ここの人たちがその目っていうのを目撃したの?」
「ああ。どうやらそうみたいだ。なんでも、コンテストに出すための服を作っていたらしくて、学校に遅くまで居残っていたらしい。それで、その目を目撃したみたいなんだ」
「へー、なるほどね」
セイは、部室の上の方についてある『被服研究部』と書かれたプレートを見上げた。
「ここって、聞いた話によるとほぼコスプレ研究部になってるらしいんだよね・・・・・・部長の趣味とかで・・・・・・」
「まあ被服研究部なんて大体そんなもんでしょ」
「それってド偏見だよアオちゃん・・・・・・」
と、まあそんなこんなで2人は部室のドアを開けて聞き込みをしに部室の中へ入った。
部室の中は布切れやら紙やらで割と散らかっていて、部員は2人しかいなかった。
そのうちの1人、黒髪ショートボブに眼鏡をかけた女生徒が2人に近寄ってきて声をかけてきた。
「おや?お客さんだ!!いらっしゃーい・・・・・・あれ!?君は噂の転校生かな!?」
「声でか!意外と声でかいな・・・・・・噂になってるかどうかは知らないけど、まあ、おっしゃる通り転校生ですよ。えと、あの、今日はちょっとした用事があって─────」
「ここに来たってことは君、コスプレに興味あるのかな!?」
「いやけっこうグイグイくるなこの人!!」
被服研究部の人がけっこうグイグイきた。
「・・・・・・アオちゃん、ここは一旦コスプレしてみるのはどう?」
「セイまで何を言い出すんだよ・・・・・・」
とにかく、一旦落ち着いて瑠璃の話を聞いてもらうことにした。
瑠璃は、ここにきた理由をその女生徒へ話した。
「ふーん、なるほどね。つまりアオさんはあの巨大な目のことについての話を聞きにきたんだね」
「そう。そういうこと」
「なんだ、入部にしにきてくれたわけじゃないんだ・・・・・・」
「それはその・・・・・・ごめんなさい。勘違いさせてしまったみたいで・・・・・・」
女生徒がしゅんとしてしまったので、瑠璃は素直に謝った。
「それにしても、一体どうしてそんなのを聞きたいのかな?別にそこまで面白い話でもないと思うんだけど・・・・・・」
「えーっと、それは・・・・・・まあそういう学校の怪談的なものにけっこう興味があって・・・・・・」
「あー、なるほどね」
けっこう苦し紛れの言い訳だったと思うのだが、女生徒はそれで納得してくれたみたいだ。
「えーっと、お名前は・・・・・・」
「ああ、ごめんごめん自己紹介がまだだったね。初めまして、アオさん。セイさんはちょっと話したことがあったかな?私は田中ユウ。一応、この部の部長をさせてもらっている者だよ。で、ここで作業してるのは部員の有崎アリ」
「えーっと、初めまして」
「作業してるとこ邪魔しちゃってごめんねー、有崎さん」
瑠璃とセイの2人が有崎さんに向かって声をかけると、有崎さんは少し笑いながら大丈夫、と言ってまた作業に戻った。
邪魔しては悪いので、とりあえずはこの部長から話を聞くことにした。
「いやー、いつもはもっと部員がいるんだけど、今日に限ってみんな各々用事があるらしくて、この2人だけになっちゃったんだよねー。でも私は目撃者だから、話を聞くにはもってこいだと思うよ。アリちゃんはその場にいなかったから見てないけどねー」
「なら良かった。じゃあ早速話を────」
「ちょっと待って!その前に!」
話を聞こうとする瑠璃を遮って、田中部長はこんなことを言い出した。
「その目についての話を聞かせてあげるからさ、アオさん、代わりにモデルをしてくれないかな!?」
「・・・・・・はっ!?」
いきなりとんでもないことを言い出した。
「い、いやモデルって・・・・・・」
「モデルだよモデル!コスプレモデル!!アオさんに私が作ったコスプレの衣装を着てもらって、それを部室のドアのとこに貼り出したいんだよ!そうすればうちの部に興味を持ってくれる人が爆発的に増えると思う!!」
「いやいや、流石にそんなわけないでしょ!!そんな、私1人がモデルになったくらいで増えないし!それにコスプレとか、私そんなの────」
「アオちゃん」
「・・・・・・セイ?」
「ここはコスプレしよう。ここはもうコスプレしないと無理だよ」
「・・・・・・」
お前が見たいだけだろ、と瑠璃は思ったが、確かにこの田中部長はなんとなく引き下がってくれないような気がしたので、瑠璃は仕方なくコスプレをすることにした。
「まあ仕方ないか・・・・・・けど、露出多めのはやめてほしいな。ヘソ出しとかはちょっと・・・・・・・」
「わかった。私もそこまで無理強いはしないよ」
「そういえばアオちゃんって、あんまり露出多めな服は着ないよね。何か理由があるの?」
「え、それはその・・・・・・恥ずかしいからだけど・・・・・・」
「・・・・・・かわいい!!露出多めを恥ずかしがるアオちゃんもかわいいー!!」
「セイ・・・・・お前もう私のことなんでもかわいくなってるじゃん」
「仕方ないでしょ、なんでもかわいいんだから」
「はいはい。そこ、人の部室でイチャつかないのー。・・・・・・ほらこれ、ちょうどアオさんに合いそうなやつ出してきたから」
田中部長が引っ張り出してきた衣装を見ると、アニメに出てくるお嬢様キャラとかが着ていそうなドレスであった。
「おおーすごい!これ部長さんが作ったの!?」
「うんそうだよ。けっこう苦労したんだー」
ははは、と笑う部長。瑠璃はその部長の持つドレスを見て、素直に感心した。
「そりゃ苦労もするよ、こんなすごいの手作りしたら・・・・・・」
「さて、これからアオさんにはこれを着てもらうわけなんだけど・・・・・・」
部長は瑠璃の目を見据えて、こう切り出した。
「実は、私はちょっとした特殊能力を持ってるんだよね」
「ん?」
「実はね────」
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