オーロラ クリスタル

こてつ

プロローグ

リディ スロット

「町で大きな事故があった。帰りが遅くなる。」

 夫のエヴァン スロットから電話があった。

 エヴァンが自分のスケジュールを変える事はめったにない。


 チャンスだ。


 外から硬く施錠された窓の外へ目を凝らす。星も月も厚い雲に隠れ辺りは街灯の光以外は真っ暗だ。だが、感覚のするどいリディには強くなってくる風と雷を伴った雨が近づいてくるのが分かる。


 嵐は嫌いだ。だが、目隠しになる。

 このチャンスを逃すわけにはいかない。

 ずっと、準備していたのだ。


 窓を背に広い部屋を見渡す。

 白を基調に規則正しく並べられたテーブルや椅子。チリ一つ無く、そこに置かれた小物一つが一ミリもずれる事無くそこにある。

 リディは身震いする。


 逃げるのだ。この息の詰まる空間から。今すぐに・・・。




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